研究課題/領域番号 |
20K13907
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分09020:教育社会学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小川 未空 大阪大学, 大学院人間科学研究科, 助教 (40848610)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 公正 / 校内暴力 / 近代学校 / 市民性教育 / シティズンシップ / ケニア / 学校放火 / 平等 / 試験問題 / カリキュラム / 中等教育 / シティズンシップ教育 / 東アフリカ / 市民性 / 公共性 |
研究開始時の研究の概要 |
グローバル社会となった昨今、地球市民としての市民性の涵養は不可欠なものとして位置づけられるようになった。しかしながら、アフリカ諸国では、植民地支配に起因する国内での民族間の対立や、独立前夜の黒人ナショナリズムなど、地球市民としてのアイデンティティの前に、様々なレベルの市民性が複雑に折り重なっている。本研究では、そのような複層的な市民性を前提に、現代のグローバルな地球市民観が、東アフリカ諸国の学校教育でどのように受容されているのかを、地域ごとの特色を踏まえて横断的に検討する。これにより、各国内の市民性の解釈を検討し、地球市民との齟齬がいかに生じているかを明らかにする。
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研究実績の概要 |
4年目にあたる令和5年度は、3年目に開始したケニアで急増している生徒による学校放火事件を対象とした研究に取り組んだ。学校放火に関する報道資料および裁判所が公開する判例集の収集と分析を進め、その成果を論文にまとめた。本分析においては、学校放火事件を生徒による政治的主張行為のひとつとしてとらえ、なぜ放火が起こるのかその特徴についての検討を進めた。本分析の結果は、次の3点にまとめられる。第一に、放火は複数生徒が学校への主張を共有している場合に生じやすいこと、第二に、学生寮が被害を受けるものの意図的に他生徒を殺傷するリスクは軽減されていること、第三に、放火の背景には生徒自身の権利や居場所を脅かされることに対する不安があること、である。以上を踏まえ本研究では、学校教育に伴う近代を象徴する装置が、放火を誘発する一要因ではないかと導いた。よって、ケニアの学校放火は、若年層の個別の暴力や生徒の規律の乱れによって生じるものと捉えるよりも、寮制校や権威主義といった閉鎖的空間に対する抵抗、ひいては、近代学校という制度に対する社会的な抵抗として捉えるほうが妥当ではないかと提起した。 また、5年間分の試験問題(社会系の3科目)の分析を通して、ケニアにおいて、どのように善や正義、公正が認識されているかを検討し、その成果を書籍および論文にて公開した。公正性に関連するさまざまなトピックの扱いに焦点を当てた結果、ケニアにおいては、民族、ジェンダー、人種といったテーマと比較して、経済格差の問題に重点が置かれていることが明らかとなった。また、自由競争よりも社会福祉や相互扶助がかなり重視されていることが明らかとなり、ケニア独自に正義や公正に関する概念が定義されていることを指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画とは異なるものの、分析対象を変えたうえで研究をおおむね順調に進めることができている。研究成果も、学会や論文、書籍などを通して順調に公開するに至っている。
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今後の研究の推進方策 |
オンラインで入手可能な資料の収集がおおむね完了しているため、現地調査の再開を予定している。得られたデータの分析を踏まえて、学会での分析結果の発表、そして論文の執筆につなげていきたい。
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