研究課題/領域番号 |
20K13915
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分09020:教育社会学関連
|
研究機関 | 東京医療保健大学 |
研究代表者 |
栗原 麗羅 東京医療保健大学, 看護学部, 講師 (40848652)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
|
キーワード | ドイツの学校制度 / 教育機会の平等・公平 / ドイツ / 学校制度 / 教育機会 / 習熟度別指導 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、習熟度別指導の機能緩和が進むドイツと、機能強化が進む日本の学校制度を比較し、日本の学校教育は教育機会と結果の平等・公平の概念をどのように捉え、習熟度別指導をいかに取り入れるべきかを明らかにすることだ。 ドイツの前期中等教育では、生徒の能力や進路志望に応じて進学先の学校種を選ぶ三分岐型学校制度が伝統的に採用されてきた。しかし、教育機会の平等を目指す観点から分岐型から単線型学校制度への移行も一部の州で進んでいる。 対して、日本の学校教育は単線型学校制度の特徴が強い一方で、習熟度別指導の導入も近年進んでいる。比較研究の結果を基に、日本の学校における個に応じた指導の充実化に示唆を与える。
|
研究実績の概要 |
当該年度の研究では、ケネス・ハウによる教育の平等や分配に関する議論に着目し、ドイツの分岐型学校制度において教育機会の「平等」の概念がどのように捉えられるのかを明らかにした。ハウは教育機会の平等に関する解釈を、形式論的、補償論的、参加論的解釈の三つに区分した。 トラッキングを行う際には、人種やジェンダーのような道徳的に不適切な基準を用いないという「形式論的解釈」の前提を満たすことが求められている。しかし実際は、ドイツの分岐型学校制度において、生徒の能力ではなく社会的出自や移民背景を基準にした進路選別を行っている事例が存在する点に注意が必要である。 教育制度でその人を不利な状況に置いている個々人の特性を補償することによって、望ましい教育歴の形成を助けることを目的としたのが「補償論的解釈」である。ただし、現体制の基準や慣行を適切なものとして受け入れるため、教育的な価値に関する議論を避ける傾向があり不適切な場合が多い。 そこで、補償論的解釈の欠点を回避するものとして、ハウは「参加論的解釈」を提示する。どのような教育機会が実際に求めるに値するのかを決める際に、すべての集団の要求や関心、見解を含めるという要件を、教育機会の平等の原理に組み入れようとするのである。 ドイツでは前期中等教育の進路決定権を学校側から保護者側に移譲する進路勧告制度改革が行われている。社会的出自が不利な立場にあるためギムナジウム進学が認められなかった生徒が、この改革によってギムナジウムに進学できるようになれば、ハウが提示した補償論的平等の実現に結びつくであろう。さらに、分岐型学校制度の学校種を統合した総合制学校の導入がドイツの一部の州で進められている。一人ひとりのアイデンティティを受け入れ、すべての生徒が自身にふさわしい教育機会を得ることが可能となれば、ハウが提示した参加論的平等が実現すると考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題の主要な研究方法は、文献分析・考察である。本研究課題に関するドイツ語文献の所蔵状況が日本国内の図書館において十分ではなく、資料をドイツ国内の大学図書館等で入手する必要があることから、科学研究費助成事業に応募し、採択された。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大によりドイツへの渡航が長期にわたり制限されており、文献資料を十分に入手できていない。そこで当該年度は、インターネット(通販)で入手できた史資料・書籍を基に研究を行った。 以上の理由から、本研究課題の進捗はやや遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
研究実施計画では、1~2年目にドイツの分岐型学校制度に関する史資料の現地調査および翻訳・分析作業を行う予定であったが、新型コロナウイルスの感染拡大により3年目まで現地調査を実施できなかった。現在は感染が収束しつつある一方で、国際情勢の変化により海外渡航費が大幅に上昇している。よって、予算額での支出が可能であれば現地調査を行う予定である。 また2023年度は、ドイツの分岐型学校制度における生徒の社会的出自と進路選択の関係に着目した研究結果をまとめ、学会発表を行う予定である。
|