研究課題/領域番号 |
20K13918
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分09020:教育社会学関連
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研究機関 | びわこ学院大学 |
研究代表者 |
白銀 研五 びわこ学院大学, 教育福祉学部, 准教授 (70826213)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | ベトナム / 教育課程 / 評価 / 進級 / 言語教育 / 和入教育 / 発達障害 / 制度 / 特別なニーズ / 包摂 / 和入教育(ホアニャップ教育) |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、ベトナムで受容された「インクルーシブ教育」である和入教育(ホアニャップ教育)において、課程主義にもとづいた進級が特別なニーズのある子どもの教育を保障するうえでどのような機能を果たすのかを明らかにすることである。方法は、1.法規定における進級制度の検討、2.学校種ごとの進級に関する方針の整理、3.特別なニーズのある子どもを対象に経年変化から進級可否に至る過程の分析、である。これにより、教育機会の公正や質としての学習内容と関連して、包摂を個別の制度や実践に起因したものではなく、種々の制度と実践が複層的に重なり合って生じる構造的な問題としてとらえなおす。
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研究実績の概要 |
2023年度は、政策と実践から進級の可否の仕組みを総合的に考察し、その機能についての研究成果をとりまとめた。まず、2018年から進められてきた「普通教育章程」(日本の学習指導要領に相当)の改訂では、2006年改訂の「普通教育章程」と比べ、特に言語教育では獲得されるべき資質・能力の標準化が強調される変化を確認できた。一方、言語にまつわる四技能の獲得、自国の文化や異文化の知識および理解に見る標準化の傾向は、言語のもつ多元的な解釈を縮減させる可能性がある。また、障害のある子どもを障害のない子どもとともに同じ学校で学習させる和入教育では、筆記試験から日常の姿勢・態度まで教員の評価観点には違いがあった。教師は言語の発達に遅れが見られる児童に対して、基準を調整しつつも筆記試験を課し、その得点の高低によって留年させ、既習事項を再度履修させることは子どもの教育権を保障することであるとの信条を持っていた。したがって、評価の方法・観点は教員の裁量にまかせてゆるやかにおこなわれながら、小学校条例等の法律規範文書で定められた評価の仕組みは教育権の保障という点で支持されていた。これらの政策動向と教員の実践を重ね合わせて見れば、言語教育政策では能動的な学習が目指される中で獲得すべき知識や理解の程度が明示されるようになるなかで、教師は評価の方法や観点を柔軟に解釈しつつ、言語にまつわる資質・能力を数的基準で判断することに正当性を見出していた。このように考えたとき、教育実践として残存する進級可否を判断する仕組みは、新たな言語教育政策に見る標準化に対して、実践において基準の正当性を追認する点で、言語の解釈を縮減させることを助長する機能を有していることが示唆された。 本研究はコロナ禍によって大きな影響を受けたものの、2023年度に国際学会を中心に成果発表し、今後成果を論文として公表する予定である。
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