研究課題/領域番号 |
20K13955
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分09030:子ども学および保育学関連
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
金井 欣秀 埼玉医科大学, 保健医療学部, 講師 (80615477)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 重症心身障害児 / 胸郭可動性 / 胸郭コンプライアンス / 胸郭運動性 / 人工呼吸器 / 肺コンプライアンス / 救急蘇生バッグ / 医療的ケア / 重症心身障害 / 呼吸運動 / 理学療法 |
研究開始時の研究の概要 |
医療的ケア児に含まれ、呼吸障害を呈する重症心身障害児には呼吸理学療法が徒手的または機械を用いて実施されるものの、その目的は呼吸障害発症後の治療である。 呼吸障害発生後の呼吸理学療法自体はこれまでも行われてきたものの、呼吸障害が発生する以前に障害児の呼吸に対する理学療法を実施するという発想はこれまでに十分に報告されていない。そこで、機器を用いた乳幼児期からの呼吸発達理学療法によって、胸郭の形成具合・呼吸運動のパターンが健常に保たれるかの解析を行う。本研究では予防的呼吸理学療法という新しい仮説に基づいて、重症心身障害児の健全な胸郭の形成ならびに健康的な呼吸運動の育成を進めるプロトコルの開発を行う。
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研究実績の概要 |
本研究は医療的ケアの中でも呼吸に配慮が必要な児の呼吸運動の健やかな育成を進めるプロトコルの開発を目的に実施している。医療的ケアを必要とする児の中で、特に呼吸障害を有する重症心身障害児を将来的に利益を享受する対象と想定している。重症心身障害児は筋緊張の亢進や低下などの筋の異常な収縮に影響され、二次的な脊柱や胸郭の変形を伴う。それにより副次的な呼吸障害を呈することが多い。そのため、呼吸障害に対する事後の対応ではなく,予防的に呼吸障害を重篤化させぬことが重要であり、本研究での健やかな呼吸運動育成とは健全な胸郭及び呼吸運動の成長を促すことを念頭においている。そのため、適切な呼吸を育成するための介入の効果を測るために、まずは呼吸運動が適切に行われているかを呼吸生理学的にではなく、運動学的に測定する試みを人体モデルの呼吸シミュレーターを用いての検討を行っている。2023年度は2022年度に引き続き、体表面からの胸郭運動性を測定する試みをシミュレーターとセンサーを用いて実施した。胸郭の運動性をはじめとした運動の特徴は上位胸郭と下位胸郭では異なるため、それぞれを別部位として測定することとした。健常成人においても上位胸郭の運動性は下位胸郭の運動性と比較し低い。よって、今回の研究で行った手法では下位胸郭の運動性は検知可能であるものの上位胸郭の運動性について確認することは困難であった。そのため、ひとまず呼吸理学療法の効果による胸郭運動性の変化については主として下位胸郭の運動を測定することでも意義あることと考えられた。このように胸郭運動の変化を適切にとらえることが可能となれば、続いて健やかな呼吸運動を促すための介入によって胸郭運動やそれに伴う胸郭の外郭自体の構造がいかに変化したかを理解することが可能となり、介入方法への示唆にもつながることが考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
元来実施する予定であった非侵襲的人工呼吸器による健常者の肺への送気による肺コンプライアンス・胸郭可動性の変化についての評価に関する研究やその研究結果に基づく患者への介入方法の研究計画はすでに変更している。2023年度は2022年度から継続して人体を模した呼吸運動シミュレータでの研究を実施し、胸郭可動性の変化を胸郭体表面から運動学的に評価する方法を検討した。当初、上位胸郭及び下位胸郭についてそれぞれの胸郭の運動方向を勘案し個別に測定方法について検討を行っていた。実際には上位胸郭については人体の前額面における頭尾部方向、下位胸郭については人体水平断面の周径について測定を検討した。結果として、上位胸郭については健常者であっても、現在用いているセンサーの精度では上位胸郭の運動性の小ささにより、体表面の変化量を検知することができなかった。一方で、下位胸郭については測定部位の周径の変化が見られたため、今後もこの下位胸郭の周径の変化を中心に胸郭運動の様子をとらえることを予定している。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は人体を模したシミュレータで胸郭可動性の測定方法を引き続き修正・検討しつつ、非侵襲的な方法で健常者を相手に胸郭可動性の測定を実施する。現段階では下位胸郭についてのデータ測定は有効であると考えられるため、今後はデータ測定部位の検討から発展し、測定姿勢について着目することを検討している。実際には1つのみの姿勢ではなく、複数の姿勢の変化による胸郭運動の変化についてとらえる予定である。このような研究方針を念頭に置き、予備的研究として健常者の姿勢変化による胸郭運動の変化について安定的に客観視し、定量化することが可能となれば、その上で新たな実験デザインを打ち立て、より適切なサンプルサイズの研究対象者にご協力いただき、データ取得に努める。その上で健常者に用いた手法を基に、重症心身障害児を測定対象とし、その胸郭可動性の変化をとらえることに適した方法へ修正を行うことを考えている。そうすることにより、さらに研究を深めて健やかな呼吸運動を育成するための基礎条件となる資料が得られる予定である。
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