研究課題/領域番号 |
20K13975
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分09040:教科教育学および初等中等教育学関連
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
中野 登志美 宮崎大学, 教育学部, 准教授 (10757909)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 批判的思考力 / 比べ読み / 文学教材 / マンガの活用 / 理論と実践 / 批評読み / 教材分析 / 国語科教育 / メタ認知 |
研究開始時の研究の概要 |
グローバル社会を生き抜くための能力として、多くの国々で「批判的思考力」の育成が重視されている。それは日本でも同様である。しかしながら、我が国の国語教育研究においては、文学的文章を読むことを通して批判的思考力を習得することは難しいと見なされている。 そこで本研究は、小学校高学年から高等学校までの系統性を視野に入れ、複数の文学的文章を読み比べることによって、批判的思考力が育成されることを実証する。
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研究実績の概要 |
2022年9月に「マンガを活用した小説学習指導の有効性の検証-葉山嘉樹『セメント樽の中の手紙』-」(『月刊 国語教育研究』第605号、日本国語教育学会)を発表した。拙論は、比べ読みによって批判的思考力を育成するための理論と実践に基づいた論文である。 本論はマンガというメディアを活用して、批判的思考力の育成を目指したものである。具体的に言うと、『セメント樽の中の手紙』を教材性の観点から分析した結果、本文の文末の一文に着目すること、そして結末場面の後、主人公はどのような行動をするのかを考えることで、学習者に現実の自分自身との対峙を働きかけることを導出した。マンガの最後の場面を「空所」にする仕掛けを設けることによって、マンガに描出された最後のコマと学習者が考えた結末を比較したり、『セメント樽の中の手紙』の作者・葉山嘉樹が書いた文末の一文の主意(マンガでは最後のコマにあたる)を捉えたりすることが可能になり、学習者が新たな視点や多角的な観点から現実社会を批評できるようになると想定した。 「批判力」の定義は様々あり確立していない。だが、『セメント樽の中の手紙』に描かれた大正時代の過酷な労働実態と自分自身が「今」存在する世界について多角的に自分の考えを生み出することが、『セメント樽の中の手紙』の特性を生かして育成される批判的思考力であると定義づけた。本研究の仮説に基づいた実験授業では、現代社会を生きる学習者が、現実社会を見つめ直すことによって、学習者は自分が存在する世界について考える視点を得られるようになった。『セメント樽の中の手紙』の文末や文末を描出した部分のマンガを比べて読み考えることによって、文末に着目して考えたことを礎にした学習者の読みや見解が構築され、本研究の有用性が認められる結果に至った。 学習者の批判力が育成される有用性が示された論文を公表できたことは、本研究の成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
「批判的思考力」の研究は、クリティカルシンキングとしてアメリカを中心に進められている。アメリカを中心とした諸外国では、どのように批判的思考力を育成しているのか知見を得るために、アメリカを中心とした諸外国の学校の授業の視察に行く予定である。しかしながら、コロナ禍のために諸外国の学校の視察に訪れることが難しい状況であった。 今年度までに2回ほど海外視察を行い、その成果を論文として発表している予定であった。しかし、数年の間、コロナ禍の状態であったために海外の授業を視察することは難しく、その成果を論文として発表することができていない。海外での授業の視察を取り入れて考察した批判的思考力の研究はまったく進んでいない状況である。 しかし、ようやくコロナ禍が落ち着いてきたので、可能であれば今年度中に一度目の海外視察を実行したいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
高等学校の定番の文学教材の比べ読みの実験授業を行ったところ、比べ読みをする前と後では学習者の考えに変容が認められた。学習者が記述したワークシートを分析すると、批判的な観点から思案していることが認められた。この実験授業を詳細に分析した成果を論文として発表するために取り掛かっている。 また、海外視察については海外で行われている授業の参観の許諾を得るために、批判的思考力を研究しているアメリカの研究者とメールで交渉している段階である。
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