研究課題/領域番号 |
20K13995
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分09040:教科教育学および初等中等教育学関連
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研究機関 | 大阪経済大学 (2023) 岩手大学 (2020-2022) |
研究代表者 |
馬場 智子 大阪経済大学, 経済学部, 准教授 (60700391)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | ESD / ソーシャルディスタンス政策の功罪 / トランス・サイエンス問題 / マイノリティ / エンパシー / 地域に根差したカリキュラム開発 / トランスサイエンス / 防災・復興教育 / 地域の実態に応じた科学教育 / 合意形成能力 / 外国人児童生徒に対応したカリキュラム / STS教育 / ELSI |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、以下の3つの課題に取り組む。 ①トランスサイエンス的課題に対する、西欧社会と非西欧社会における合意形成の内容・および過程の違いに関する既往諸文献を収集・分析してその総合化をはかる。 ②トランスサイエンス的課題について市民側から提供可能な知見や技術を、科学の専門家に論理的に提供する方法を、先行事例での成果や課題から分析する。 ③内容①と②を、中等教育の教育課程に組み込む際の具体的な方法と教育内容を提示するため、授業実践を通じた理論の検証と課題分析を行う。
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研究実績の概要 |
(1) 日本人学生・タイ人学生両方を対象とした調査の実施:①トランス・サイエンス問題に関わる教員養成教育を検討することを目的に、養成課程で学ぶ日本人学生のトランス・サイエンス問題、とりわけ具体的な事例への意識として「ソーシャル・ディスタンスの功罪」について検討する質問紙調査の結果を学会で公表した。その結果、学生の専攻・専門分野に関わらず、疫学的観点からの根拠に基づく功罪の検討がなされており、その他の観点(例:経済学・社会学など)での検討がなされていないという課題が明らかになった。②日本およびタイで中学校・高校教員を志望する学生に対し、地域性を取り入れた科学教育に関する質問紙調査を実施することができた。また、日タイの質問紙調査は、トランス・サイエンスに関する授業の前後に実施しており、2024年度には、両国の学生の意識や、授業を受けての思考の変化等について比較した調査結果を報告する予定である。具体的には、日本比較教育学会(2024年6月)、世界教育学会(WERA、2024年9月)での発表が審査通過済みである。 (2)移民およびエスニックマイノリティ集住地域での学校訪問調査:2022年度に行ったオンラインでの調査結果を補完するものとして、タイ北部(チェンライ県)の移民およびエスニックマイノリティが通う学校を対象に、学習状況および学習課題に関する調査を実施することができた。その結果、トランス・サイエンス問題についてタイ人と比べて情報格差があり、その一因としてデジタル・ディバイドが考えられること、これまで認識されていなかった情報格差について、コロナ下ではその存在が認識され、一部自治体ではその対応策を取り始めていることも明らかになった。2024年度ないしは2025年度(国際学会であるため開催日程によっては年度をまたぐ)に成果を報告する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ下における感染防止対策は、まさにトランス・サイエンス問題として考えられるべき喫緊の課題である。その大きな影響を受けた教員養成学生に対し、当初の予定通り日本とタイで意識調査を行うことができ、特に日本では経年アンケートを実施できている。これは、教員養成課程の学生の、具体的なトランス・サイエンス問題の意識という貴重な結果となりうるものである。また、タイではマジョリティのみならず、マイノリティに対しても現地調査を開始することができた。これらの点では、当初の計画よりも進展している。しかしながら、新型コロナ五類移行後も感染の影響があり、日タイ合同のワークショップ実施は困難であったという点では遅れている。そのため、全体を鑑みて「おおむね順調」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
(1)トランス・サイエンス的課題でもある「感染症対策の功罪」を学生に考えさせる調査を2024年度も引き続き行う。2023年度の日本での調査実施後に、新型コロナが五類になるという変化があった事や、中高生で遠隔授業等を経験した学生が入学しているという変化があること、またコロナ禍を振り返っての意識の変化が見受けられると予想される。 (2)新型コロナへの対応の課題から、感染症対策以外のトランス・サイエンス的課題に対して、学校のみならず高等教育機関で求められる教育・プログラムの分析が喫緊の課題となると予想されるため、今後、高等教育機関におけるトランス・サイエンス的課題への対応、特に初年次教育における学習内容について検討するという新たな課題への発展を模索している。
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