研究課題/領域番号 |
20K13999
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分09040:教科教育学および初等中等教育学関連
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研究機関 | 愛媛大学 (2023) 大阪大学 (2022) 大阪教育大学 (2020-2021) |
研究代表者 |
清田 朗裕 愛媛大学, 教育学部, 講師 (30784003)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2020年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 古典教育 / 古典資料 / 往来物 / 古記録 / 国語教育 / 推論 / 教科書 / 形式 / 言語事項 / 学習指導要領 / 日本語学 / 実用文 / 指示語 / 手紙文 / 教材開発 / 国語教科書 / 論理的思考 / 推論・照応 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は,これまで国語教科書に掲載されてこなかった実用文的な古典資料(古記録や往来物等)を活用し,新たな古典教育教材を開発するものである。 具体的には,主に以下の研究を行う。 (1)文学作品以外の,実用文的な古典資料の収集・整理 (2)古典文学作品読解上必要な常識・既有知識の検討 (3)(1)・(2)を組み合わせた古典教育教材の開発 (4)開発した教材の学校現場における実践及びその有効性の検証,である。
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研究実績の概要 |
2023年度は勤務先が変化したため、環境整備を行う必要があったが、附属学校の協力もあり、4回計8単位時間にわたる実践研究を行うことができた。その内容を含め、主に以下4点の研究発表・論文化を行った。 ①さまざまな手紙文の学習の中で往来物を取り上げ、その形式と内容の価値づけを意識させる授業実践を行い、その結果を発表した。具体的には、手紙文の歴史を大きなテーマとし、様々な手紙文を取り上げる中で往来物も取り上げた。これにより、往来物が手紙文の歴史の一端を担っていたこと、手紙文の形式がもつ意味を考えさせた。②『竹取物語』でかぐや姫が翁と帝に送った手紙文を比較した。具体的には、翁への手紙には愛惜の情が情緒豊かに表現されている一方、帝にはこれまでの感謝と伺候できなかった理由を理性的に表現しているという違いが認められた。③旧学習指導要領に基づく「古典B」と新学習指導要領に基づく「古典探究」の、同一出版社同一単元における学習課題の変更点を整理することを通して、現在の古典教育の方向性を考察した。具体的には、出版社毎に変化の方向性は異なっており、ほとんど課題に変化がない保守的なものもあれば、すべての学習課題の内容に変更・追加が認められるものもあった。④附属学校の協力を得る中、古典における実用的な文章である「農書」の教材化への道を開くことができた。具体的には、農書を含む土居水也著「清良記」の、語学的側面における基礎的研究を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は、勤務先が変わり、研究体制を整備する必要があったが、新型コロナウイルスの5類移行に伴い、附属学校において授業実践を行う機会が得られたことにより、これまで実践できなかった授業開発研究を進めることができた。具体的には、合計4回8単位時間授業実践を行うことができた。そこでは、手紙文の歴史に着目し、往来物を古典教育にどのように位置付ければよいか、様々な手紙文を取り上げつつ考察した。なお、研究を進める中で、附属学校において、2024年度も引き続き実践研究を行う話が進んでいる。 次に、高等学校の教科書内にみられる学習課題に着目し、旧学習指導要領と新学習指導要領に基づく教科書の学習課題の変化について、分析を進めることができた。具体的には、探究的活動を数多く追加する教科書と、以前とあまり変わらない学習課題に終始する教科書に分かれており、出版社毎に方向性が異なることが明らかになった。 これらの内容は、2024年度発行の学会誌掲載に向けて作業が進んでいる。 なお、以前から取り組んでいた『竹取物語』にみられるかぐや姫の手紙の比較については、翁に対する手紙文の表現と帝に対する手紙文の表現が大きく異なっており、そこからかぐや姫の心情を推し量ることができることから、「比較」の観点が、推論を行う際に有効であり、教材化に当たっても重要なポイントになることが明らかになった。この手紙文の比較は論文化した。 以上のことから、「おおむね順調に進展している」とする。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度の研究を通して、文学以外の古典資料は、単独で教材化するよりも、複数の作品を取り上げる中で、「比較」対象として活用していくという方向性が考えられること、また、たとえば手紙の形式のように、すでに定まっている形式を暗記する形ではなく、形式がもつ価値を、様々な手紙文のテキストの読解を通して意味づけていく過程を授業課題(発問)に盛り込んでいくことが、学習の価値づけにおいて重要であること等が明らかになってきた。 上記を踏まえ、2024年度は、昨年度に引き続き、附属学校の協力を経て、文学以外の古典資料の教材開発及び実践授業を行い、成果発表を行っていく。特に、「古典探究」の教科書を悉皆調査した際、学習指導要領に掲載されている『明衡往来』『庭訓往来』を始めとした「往来物」よりも、『御堂関白記』『小右記』『明月記』といった貴族の日記である「古記録」が取り上げられている実態が明らかになったため、往来物だけでなく古記録を活用した教材開発を推進していく。それを通して、古典教育が、文学だけでなく、文学以外の古典資料を通して総合的に学習できるようになることを目指す。 その際、比較時には推論能力が必要になってくることから、その向上に資する適切な比較対象を教材化していくために留意すべき点は何かについても、考察していく。 なお、本年度が最終年度であることから、年度末には本研究を研究報告書等にまとめ、公開する予定である。
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