研究課題/領域番号 |
20K14007
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分09040:教科教育学および初等中等教育学関連
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
吉村 隆之 鹿児島大学, 法文教育学域臨床心理学系, 准教授 (50827144)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2021年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | いじめ防止対策推進法 / 重大事態調査 / 調査報告書 / 学級や学校の荒れ / 心理職 / 生徒指導システム / 多層支援 / 地域における包括的支援 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は,いじめ,不登校,暴力など生徒指導上の問題の発生件数と学校における生徒指導システムがどのように関連しているのかについて第一の基礎研究を行い,生徒指導システムとその機能を測定するツール開発を行う。 次に学校の生徒指導のシステムを,教育委員会等を中心とした地域でどう支えるのかについて,自治体や教育委員会を対象とした調査を第二の基礎研究として行い,先進的な取り組みが行われている国,地域で,関係者への面接調査と資料収集を行う。 最後に基礎研究で得られたツールや知見をもとに,いじめ防止対策推進法の組織を活用した学校の生徒指導システムを地域で支えるための包括的支援について実践研究を行う。
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研究実績の概要 |
本年度は、①いじめ防止対策推進法における重大事態(以下、いじめ重大事態)が発生するプロセスを明らかにするためのいじめ重大事態報告書の分析、②いじめ重大事態に学級や学校の荒れが及ぼす影響に関する検討を重点的に行った。 まず、いじめ重大事態について公開されている報告書をインターネットや新聞社のデータベースから検索、収集し、その中でいじめ事実が重大事態へ影響していることを認定している報告書、およびそのプロセスが詳細に記されている報告書を対象として質的分析を行って、プロセスを抽出した。その結果、被害生徒や地域コミュニティの特徴や経緯、および学校における教育困難な状況が、いじめの発見や対応を困難にしており、そうした発見の遅れや不適切・不十分な対応へとつながっていた。またこうした経過の中でも、被害生徒を被害を表現したり、周囲の大人もサポートを行い、一部荒れが沈静化するなどの変化は認められた。しかし、こうした被害生徒や周囲の努力を上回る形で、いじめを把握する困難と不適切な対応とが悪循環を形成し、その結果として被害生徒の支えが減少して孤立することで、最終的にはいじめ重大事態(今回の研究では「自死」)が引き起こされてしまうというプロセスを生成した。 次に、教育困難な状況がいじめの把握や適切な対応を阻害しているという①の結果を踏まえて、学級が学校の荒れがいじめ重大事態へ与える影響について分析した。その結果、①の結果に加えて、荒れによる人的資源の消耗が、校内連携の困難や学年や学校間の引継ぎ不足を招き、そのためにいじめ把握がより困難になるというプロセスが明らかとなった。 以上の本年度の研究実績は、学校における児童生徒支援を支える学級経営やその風土、および学校経営やその風土が、いじめ重大事態へと与える影響とプロセスを理解する上で参考になる成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19禍の影響により県外への移動が困難となり、昨年度から今年度にかけて行う予定であった海外や県外での実地調査が行うことができていない。
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今後の研究の推進方策 |
今後もCOVID-19禍の影響は免れないため、昨年度から研究の一部を既存の報告書などの資料をもとにした研究へと一部方針を変更している。しかし、それだけでは本研究課題の目的は達成できないため、本年度は地域から申し出のあった教育委員会と共同研究に関する契約を締結した。今後は、この共同研究の中で各学校の生徒指導に関する実態の把握方法や適切な測定について検討を進める予定である。また同時に、学校だけでなく当事者である児童生徒や保護者を対象に、学校の生徒指導に関する機能の程度を測定する調査も実施を検討している。
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