研究課題/領域番号 |
20K14166
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分10020:教育心理学関連
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研究機関 | 人間環境大学 (2021-2022) 埼玉学園大学 (2020) |
研究代表者 |
高橋 誠 人間環境大学, 心理学部, 准教授 (80779827)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 性格特性的強み / キャリア教育 / ストレングス・スポッティング / 小中学生 / ポジティブ心理学 / ストレングススポッティング / 強みの育成困難感 / 強みに基づいた介入 / 強みの発達的変化 / 強みを活用するプログラム |
研究開始時の研究の概要 |
申請者はこれまでポジティブ心理学の領域で開発された「性格特性的強み(CS)」を用いて教育現場で「強みを活用するプログラム(SBP)」の実践研究 を行ってきた。本研究では、小中学校のキャリア教育の現場で活用できる「キャリア教育のための性格特性的強み(CSCE)尺度」の開発行い、小中学生を対象に、CSCEと学校適応やストレス反応などとの関連について検討を行うこととする。また,CSが実際の社会人が持つCSとどのように関連をしているかについて比較検討を行う。最後に、作成されたCSCE尺度を用いて、中学校のキャリア教育場面で実施できる新たなSBPを実施し、CSCE尺度の使用感や実用性について検証を行う。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は「キャリア教育のための性格特性的強み(CSCE)」尺度の開発を行い,社会で活躍するために小中学生から育成すべき強みとは何かについて検討することであり、主なテーマは、①CSCEリストを作成、②CSCEリストを活かしたキャリア教育プログラムの開発であった。さらに研究の進展の中で、プログラム実践者である教員が子どもに対して持つ様々な要因(資質や育成困難感等)が、介入プログラムの効果に影響を与えることが判明したため、③教員の要因に関する調査も行うこととした。 3年目となる2022年度の実績の概要は以下のとおりである。 ①「CSCEリストの作成」として、CSCEリストを用いて教員が児童生徒の強みを育成する際に抱く「困難感」について、小中学校、高等学校の教員180名を対象に調査した。結果、実際の仕事場面で発揮されることで収入や職業上の成功を得やすい強みの育成に対して教員は育成困難感を抱いていたが、対人関係や学習行動を促す強みは育成が容易と感じていることが判明した。これらの成果を「日本感情心理学会第30回大会」にて示した。 ②「キャリア教育プログラムの開発」の実績として、CSCEリストを用いてた自己の強みに気づきを促し、強みを活かした就職活動を行うためのプログラムを開発し、その効果の検証を行った。就職活動が開始される大学3年生61名に対してプログラムを実施した結果、就職活動不安感の有意な低下がみられた。この成果は「日本キャリアカウンセリング学会第27回大会」にて発表された。 ③「教員側の要因の調査」について、小学校教員のバーンアウト状態が「児童の強みを見出す傾向(TSS)や賞賛行動に与える影響について検討した。小学校教員180名を対象として調査を行った結果,バーンアウトの進行度によってTSSや賞賛行動が異なることが判明した。この成果は『日本教育心理学会第64回大会』にて発表された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の中心的な目的である①「CSCEリストの作成」に関しては、1年目でCSリストと基礎的汎用的能力との関連性の検討、2年目でCSリストに関する社会人や大学生を対象とした調査の実施と成人版CSCEリストの作成、3年目で成人版CSCEリストを用いた妥当性の検証の作業を行い、この成人版を中学校と小学校で用いるために現職教員による文言の更正作業までが終了している。最終的には本リストを小中学校の現場で用いることが今後の課題である。 ②「キャリア教育プログラムの開発」について、1年目でプログラムの開発とともに、教員や大学生に試験的にプログラムを実施し、評価と修正を行い、義務教育年代に実施可能な形式への調整が行った。2年目には大学生に対して実際にプログラムを実施した成果を検討した結果、CSの活用感や自覚度を高めるプログラムは、キャリア形成や就職活動への前向きな姿勢を高めることが判明した。3年目には本プログラムを就職活動不安の低減のために実施したところ、有意に不安感を下げることが示された。今後はこのプログラムを公立学校内で実施するための調整が必要となる。 ③「教員側の要因の調査」について、2年間で教員が子どもの強みを見出す傾向に関する調査を実施した。3年目では教員が子どもの持つ強みそのものを育成する際の困難感について調査を行った。今後は教員が持つ様々な要因が、強みを見出すようなプログラムに与える影響について詳細に検討する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である2023年度は,多くの年代で活用できるCSCEリストの完成、ならびに具体的な介入プログラム完成を目標とする。昨年度までは新型コロナウィルス感染拡大の影響により小中学校でのアンケート実施やプログラム実施に関して困難であり、今後も容易に調査を実施することが難しい状況を踏まえて、今年度も引き続き他の年代(大学生や社会人)を対象としたプログラムの実践と効果検証や、義務教育年代の現職教員との協議によるCSCEリストを実用的に利用できる形に修正する手続きが必要となることが予想される。 ①「CSCEリストの作成」として、これまでの成果で作成された小学校と中学校のそれぞれのバージョンについて、小中学校の現職教員を対象とした研修内で実際に尺度項目の確認をしてもらい、学校現場での使用に耐えうるものであるかについて調査を実施する予定である。また、可能であれば小中学生を対象にCSCEリストを実施したい。 ②「プログラムの作成」について、CSを使った既存のキャリア教育プログラムを大学生に応用したものを基礎として、小中学校の実情に合わせた簡易実施が可能なプログラムを作成する。調査実施に同意していただいた現職教員を対象にプログラムのマニュアルを元に説明を行い、学活や朝の会等の比較的短い時間の中でプログラムを実施してもらい、プログラムを実施した際の所感について教員へのインタビュー調査を行う予定である。 ③「教員側の要因の調査」として、既存の教員が子どもの強みを見出す傾向尺度(TSS)を用いて、教員が子どもの強みを見出すプログラムを実施する際の教員側の阻害要因や促進要因を明確化し、強みに関する教員側の意識や状態像を詳細に分析することで、プログラムの効果を促進できるような調査を行う予定である。
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