研究課題/領域番号 |
20K14172
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分10020:教育心理学関連
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
作村 建紀 法政大学, 理工学部, 講師 (50735389)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 近似的不偏性 / 最適性 / ベイズ推定量 / ジェフリース事前分布 / 参照事前分布 / 事後平均 / 事後モード / リスク比較 / 指数型分布族 / アダプティブ試験 / 項目反応理論 / ベイズ推測 / 項目選定 / 不完全データ |
研究開始時の研究の概要 |
IRTによる項目特性の推定において,思考力を問う試験のような少ない項目による試験では小標本問題が生じる.また,CBTの回答結果から推定するためには,回答者によって回答項目が異なる理由から従来法では困難であり,工夫が必要になる.本研究では,小標本問題に対し,ベイズ推論における予測子とリスク評価の考えを導入し,より高精度な能力評価とそれに合わせた項目選定法の開発を行う.さらに,小規模な組織におけるCBTシステムの運用のために,CBTに類似した試験法を持つ信頼性工学分野の知見を積極的に援用し,不完全な回答データから項目プールの評価をリアルタイムに行う手法の開発を目指す.
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研究実績の概要 |
2021年度に調査した自然母数によるベイズ推定量は,項目特性を推定する上で有力な推定量として扱うことができることが分かった.この推定量は情報量の観点から,リスクを最小にする予測子として誘導されるものであり,最適な推定量として得られる.一方,項目反応理論において,実用の面では推定されるパラメータそのものの値が重要になることもある.これは項目選定方式の選択にもつながる.一般に情報量を基準として次の項目を選択することが良策であるが,他方で能力評価値と項目特性値の値としての近さから項目を選ぶことも考えられる.2022年度には,より詳細な項目選定方式の検討として,これまで検討してきた自然母数の事後平均のバイアスについて調査した.その結果,このベイズ推定量は,不偏性から考案したものではないにも関わらず,驚くことに近似的に不偏性を有していることが判明した.この性質は少ないサンプルにおいても観察される.項目選定方式については,情報量を基準とするのであれば,自然母数の事後平均に関連する推定量はKL情報量を最小にする最適性を有する推定量であるため,第一候補として挙げられることは前年度に調べたとおりである.加えて,パラメータの値そのものの距離で測る選定方式を考えた場合においても,この自然母数の事後平均に関する推定量は,ほとんど不偏な推定量であることから,有力な推定量となる.よって,情報量基準としてもユークリッド距離としても,提案しているベイズ推定量を用いることが有効であることが,本年度の研究で明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度に予定していた項目選定方式の有力な方法の検討については,概ね達成できた.従来,アダプティブ試験においては,問題を解くと同時に能力を推定し,その推定結果に合わせて次の項目を選定する.このとき,選定の基準として,情報量およびユークリッド距離のいずれかの方式で選定することが一般である.これまで提案してきた推定量は,このどちらの方式においても優れた性能を持っていることが本年度の研究で明らかとなったことから,本年度の計画であった検討事項については,概ね順調に進展していると考える.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの検討で,提案してきた推定量の性能は概ね把握できた.この性質は2母数ロジスティック関数を仮定したベルヌーイ分布のもとでの検討である.一方,項目特性曲線に対しては2母数だけではなく他のモデルも多く考えられている.提案推定量は指数型分布族のもとで最適性を有するものであり,これはベルヌーイ分布や多項分布のもとでも成立する.より少ない項目で推定精度を高めるためには,正誤だけではなくどの選択肢で誤答したのかを含めるとより有用である.これには多項分布のもとでの名義反応モデルが考えられる.2023年度は,これまでに判明した提案推定量を派生モデルらにも適用することで,その有効範囲を探るとともに,本来の目的の一つである不完全データへの対応を考える.
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