研究課題
若手研究
近年、日本の公立学校に在籍する外国人児童生徒は増加の一途をたどっているが、彼らの抱える心理社会的課題に関する研究は十分には行われていない。本研究では、日本における外国人児童生徒のウェルビーイング(心身ともに良好な状態)に着目し、1)ウェルビーイングは発達に伴いどのように変化するのか、2)どのような個人内要因や環境要因がウェルビーイングに影響するのか、3)ウェルビーイングを詳細に捉えるにはどのような心理アセスメントツールが有効かについて検討する。これらを通して、外国人児童生徒のウェルビーイングに関する包括的アセスメントモデルを構築し、外国人児童生徒の支援者への提言を行うことを目的とする。
本研究の目的は、日本在住の外国人児童生徒のウェルビーイング(心身ともに良好な状態)に関する包括的なアセスメントモデルを構築し、外国人児童生徒の支援者への提言を行うことにある。補助事業期間内には、1)文献研究、2)ウェルビーイングに関する縦断研究、3)投影法による心理アセスメント研究を行うことを計画している。2022年度は、1)~3)に関連する研究に着手した。1)文献研究については、2020年度・2021年度に引き続き、外国人児童生徒のウェルビーイング研究や心理アセスメント研究に関する国内外の文献収集と整理を進めた。また、2)ウェルビーイングに関する縦断研究、および3)投影法による心理アセスメント研究については、諸事情により児童生徒への調査は次年度以降に持ち越すこととしたが、本研究課題の関連研究としてこれまでに実施してきた、日本在住の外国人児童のウェルビーイングに関する研究の成果をまとめ、書籍として刊行した。また、日本学校メンタルヘルス学会第26回大会において、シンポジウム「学校現場における多様な課題と支援」の企画と進行を務め、多様な課題の一つとして外国人児童生徒の適応と支援に関する話題を取り上げることとした。これらを通じて、外国人児童の学校生活や心の様相、そして心理的支援のあり方について、学校関係者や支援者に発信することができた。これまでの研究の内容を基盤としながら、今後の縦断研究等を計画していく予定である。
4: 遅れている
2022年度は、本研究課題に関連する研究(外国人児童のウェルビーイングに関する研究)の書籍化を優先して進め、刊行に至った。その過程で、わが国の学校現場における外国人児童生徒の現状を改めて把握することや、外国人児童生徒のウェルビーイングに関わる国内外の文献収集を進めることはできたものと考えている。一方で、本研究課題において当初計画していた、外国人児童生徒のウェルビーイングに関する縦断調査、および投影法による心理アセスメント研究に関わる調査の実施には至らなかった。その理由としては、書籍の刊行を優先したことに加えて、本研究課題以外の分担研究や本務先における教育等に割くエフォートとの調整が当初の想定よりも難しく、調査計画の精緻化や調査先との打ち合わせに十分な時間を割くことができなかったということが挙げられる。以上のことから、本研究課題の進捗に関しては、当初の研究計画よりも遅れている状況にあると判断した。
今後は外国人児童のウェルビーイングに関する縦断研究および投影法による心理アセスメント研究の計画を精緻化し、調査実施に向けての準備をを進めていく。ただし、2023年10月~2024年9月において、産休・育休に伴う研究中断を予定しているため、上記の研究に関わる調査の実施は、2024年10月以降となる見込みである。調査実施の際には、残りの研究期間を踏まえたうえで、研究計画を一部見直す必要があるものと考えている。具体的には、年に1回ずつという形で計画していた縦断調査の間隔を短縮すること、縦断調査の中に投影法による心理アセスメント研究の内容を一部含めることなどを検討している。一方で、昨今の学校現場の状況や調査協力者への負担の程度を踏まえて、可能な限り、調査項目を精査することも必要であると考えている。得られた成果は国内外における学会発表および論文投稿等により公開するとともに、リーフレットの作成等を通じて学校現場に還元していく予定である。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) 図書 (1件)
Child Indicators Research
巻: 14 号: 2 ページ: 871-896
10.1007/s12187-020-09776-y