研究課題
若手研究
近年、日本の公立学校に在籍する外国人児童生徒は増加の一途をたどっているが、彼らの抱える心理社会的課題に関する研究は十分には行われていない。本研究では、日本における外国人児童生徒のウェルビーイング(心身ともに良好な状態)に着目し、1)ウェルビーイングは発達に伴いどのように変化するのか、2)どのような個人内要因や環境要因がウェルビーイングに影響するのか、3)ウェルビーイングを詳細に捉えるにはどのような心理アセスメントツールが有効かについて検討する。これらを通して、外国人児童生徒のウェルビーイングに関する包括的アセスメントモデルを構築し、外国人児童生徒の支援者への提言を行うことを目的とする。
本研究の目的は、日本在住の外国人児童生徒のウェルビーイング(心身ともに良好な状態)に関する包括的なアセスメントモデルを構築し、外国人児童生徒の支援者への提言を行うことにある。補助事業期間内には、1)文献研究、2)ウェルビーイングに関する縦断研究、3)投影法による心理アセスメント研究を行うことを計画している。2023年度は、主に1)に関連する研究に着手し、児童生徒のウェルビーイング研究や、外国人児童生徒の心理アセスメント研究等に関する国内外の文献収集と整理を継続して実施した。また、雑誌『指導と評価』の特集記事への寄稿の依頼を受け、ウェルビーイングに関する研究動向や、本研究課題の関連研究である、日本在住の外国人児童を含めた児童の幸福感に関する国際比較研究の結果について紹介した。学校教職員をはじめとした支援者に向けて、現代を生きる児童のウェルビーイング(幸福感と不幸感)の様相や、ウェルビーイングを高めるための視座、そして外国人児童のウェルビーイングに着目することの重要性について発信することができたと考えている。その他、学校心理学に関する書籍の書評を1件執筆した。なお、2023年8月中旬より、産休・育休の取得に伴い研究を中断している。2)ウェルビーイングに関する縦断研究、および3)投影法による心理アセスメント研究については、2024年10月の研究再開以降に計画を精緻化し、児童生徒への調査を実施する予定である。
4: 遅れている
2023年度は、本研究課題のキーワードの一つであるウェルビーイングに関する研究動向を把握することを通じて、概念の整理を進めることができた。また、外国人児童生徒の心理アセスメント研究等の動向を概観する中で、本研究課題の調査計画に際して有用な知見を収集することができたと考えている。一方で、8月中旬より産休・育休を取得したことから、本研究課題において当初計画していた外国人児童生徒のウェルビーイングに関する縦断調査、および投影法による心理アセスメント研究に関わる調査は、2024年10月の研究再開後に実施することとした。以上のことから、本研究課題は、当初の研究計画よりも進捗が遅れている状況にあると判断した。
研究を再開する2024年10月以降には、外国人児童のウェルビーイングに関する縦断研究および投影法による心理アセスメント研究の計画を精緻化し、調査実施に向けての準備を進めていく。当初、2023年度までとしていた本研究課題の実施期間は、2025年度までに延長しているが、調査実施の際には残りの研究期間を踏まえたうえで、研究計画を一部見直す必要があるものと考えている。具体的には、年に1回ずつという形で計画していた縦断調査の間隔を短縮すること、縦断調査の中に投影法による心理アセスメント研究の内容を一部含めることなどを検討している。一方で、昨今の学校現場の状況や調査協力者への負担の程度を踏まえて、可能な限り、調査項目を精査することも必要であると考えている。得られた成果は国内を中心とした学会発表や、国内外雑誌への論文投稿等により公開するとともに、リーフレットの作成や研修・講演等の機会を通じて、学校現場に還元していく予定である。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) 図書 (1件)
学校心理学研究
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