研究課題/領域番号 |
20K14242
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分10030:臨床心理学関連
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
石田 哲也 久留米大学, 医学部, 助教 (20758776)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 嗜癖 / 依存症 / Complex PTSD / トラウマ / 心理教育 / 短期精神療法 / 短期精神商法 / 習慣への没入 / 自己組織化の困難 |
研究開始時の研究の概要 |
ICD-11において新たに示されたComplex PTSD(C-PTSD)では嗜癖問題が生じる可能性が高く,治療においてはC-PTSD症状に加えて嗜癖問題に対する予防と介入が求められるが,現在本邦で利用可能な治療プログラムは十分ではない。本研究ではまずC-PTSDにおける嗜癖問題の実態を明らかにする。そして,多くの支援者が一定の基準で用いることができる短期心理教育プログラムを作成し,臨床的介入の効果検証を行うことを目的とする。
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研究実績の概要 |
研究計画に基づき以下の研究を行った。 1) Complex PTSDと嗜癖問題が関連するメカニズムに関する臨床心理学的理解と介入について以下のシンポジウムで発表した(石田哲也 (2022). 外傷性ストレス症状に併存する嗜癖問題への精神療法.第118回日本精神神経学会学術総会ワークショップ8・JSPS科研費20K14242助成webシンポジウム,久留米大学医学部神経精神医学講座・久留米大学病院カウンセリングセンター主催) 2) ICD-11におけるComplex PTSD概念の正確な理解と嗜癖問題を含む様々な併存症状への対応について,我々の研究グループで作成した心理教育テキストを紹介しシンポジウムを行った(石田哲也ほか(2022). 心理職の立場からComplex PTSDへの対応を考える.日本トラウマティック・ストレス学会第21回大会シンポジウム11) 3) コロナ禍というトラウマティックストレス下における看護師のメンタルヘルス支援活動をまとめ以下の学会で発表した(山下真範・石田哲也ほか (2022). 久留米大学病院看護部メンタルヘルスケアの活動報告〜ラインケアサポートの実践.九州精神医療学会第67回大会口頭発表) 4) Complex PTSDを有し複雑な症状を持つ症例の治療経過をまとめ以下の論文にて発表した(小俵京子・石田哲也ほか(2022). 女優の自殺を契機に症状が悪化した複雑性PTSDの1例—治療関係再検討の果たす役割--.最新精神医学.27(5), 383-390) 5) トラウマ治療と伝統的な力動的精神療法における中立性を比較し,トラウマ被害者に対する初期対応として重要な治療者の態度を発表した(石田哲也 (2023/02/26). 空想か外傷か分けられないもの.現代精神分析研究会シンポジウム「見るなの禁止と巻き込まれ型原光景」.指定討論)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はComplex PTSDに併存する嗜癖問題に関する臨床心理学的理解と効果的で汎用性の高い臨床的介入について複数のシンポジウムで発表し,ディスカッションを行った。トラウマ体験や嗜癖問題に直接的に焦点を当てて取り扱うことや伝統的な中立性を堅持し過ぎることは,トラウマの被害者にとって侵襲的になりやすく治療中断を招きがちであるが,心理教育に焦点を当てた介入により中断率を低くできる可能性が示唆されている。また簡便な心理教育テキストを公開することで様々な臨床場面における初期対応として支援の裾野を広げることに貢献している。 これらの知見を踏まえ,次年度はComplex PTSDに併存する嗜癖問題に関する調査研究を行い,併存例に適用可能な心理的介入プログラムを作成していく予定である。Complex PTSDと嗜癖問題の併存例では問題が複雑化していることが予測される。Complex PTSD症状への自己治療として嗜癖問題が習慣化している可能性や,嗜癖問題によって症状悪化の悪循環が生じている可能性が推察される。
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今後の研究の推進方策 |
Complex PTSDにおける嗜癖問題に関するオンラインアンケート調査を実施し,不快なPTSD症状に対するSelf-medicationとしての自己対処行動が習慣化し後の嗜癖問題に発展するという仮説を検証する。PTSDの主症状よりもComplex PTSDに見られる自己組織化の困難(DSO症状)の方が強く嗜癖問題と関係していると予測している。アンケート調査はオンラインで患者群に対して実施する予定である。Complex PTSDの各症状を尋ねる項目,習慣への没入度を測定する尺度に加えて,精神的健康度を測定するGHQ28,BASIS32等を用いる。調査は久留米大学医に関する倫理委員会の許可を得て実施する。 調査結果を踏まえ,Complex PTSDに併存する嗜癖問題に適用可能な心理的介入プログラムを作成する。プログラムには,PTSD症状や嗜癖問題に関する理解と対応をまとめた心理教育,セルフモニタリング,ストレスマネジメント,行動活性化,ソーシャルサポートの強化を含む予定である。また面接実施に当たって,精神力動的理解に基づく支持・表出スペクトラムを意識した治療者用マニュアルを作成する。作成されたテキストを用いて短期心理教育面接を行い効果を検討する。
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