研究課題/領域番号 |
20K14248
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分10040:実験心理学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人情報通信研究機構 (2022-2023) 東北大学 (2020-2021) |
研究代表者 |
石橋 遼 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所脳情報通信融合研究センター, 研究員 (90750266)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2020年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
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キーワード | 道具使用 / 意味表象 / 行為 / fMRI / 表象類似度解析 / 1111 / 観察学習 / 意味認知 / 意味記憶 |
研究開始時の研究の概要 |
私たち人間は日常生活の中で、包丁からスマートフォンに至るまで多種多様な道具を使用している。なぜこのように多くの道具の使用法の学習が可能なのだろうか?本研究では他者の動作をまねする「観察学習」に着目し、道具使用学習におけるその神経基盤(脳における処理の実態)を明らかにしたい。具体的には「未知」の道具の使用を学習する際の脳活動および学習の前後の脳活動パタンの変化を検討し、学習に寄与する領域やその活動の実態を明らかにする。
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研究実績の概要 |
昨年度に引き続き取得済みデータの分析と結果の取りまとめを行い、英語論文1編として結果をまとめた。特に以下の2点で進捗があった。1)脳活動パタンデータの空間内相関期待値算出:昨年度まで一般化線形混合効果モデル(GLMM)を用いて、脳内の各座標での分析結果を出していた。この分析は検定回数の多さから一定のfalse positiveな結果が含まれると考えられる。補正手法であるcluster-extent thresholdingを実施するためには脳内の隣り合う座標同士のデータの相関値を必要とするが、通常の脳活動の解析と異なり住む―人語処理を行わないため、隣り合う座標でGLMMを行う際の対象データの重複を考慮に入れた疑似ノイズデータの分析シミュレーションを行った。得られた値を該当の分析における空間内相関の期待される理論値として用いた。2)閾値の算出と有意領域の画像化:上記期待値を用いて実際にcluster-extent thresholdingを行うプログラムを作成した。従来の脳活動レベル分析においては一般的な手法であるが、今回の脳活動パタンの分析においては条件間の脳活動パタンの相関を対象とし、かつ任意の重回帰モデルを使用できるようにした点で分析のパイプライン・実装方法が従来と大きく異なっている。そのため専用のスクリプト群の作成を必要とした。 以上2点の進捗により確定した結果を公表するため論文原稿を作成した。結果は意味認知の中枢として考えられている前側頭葉の活動パタンが高次の道具の意味(使用状況や使用目的)に該当していることを初めてfMRIデータの多変量解析で示したものとなっており、同領域の萎縮が道具使用の障害につながりえるという過去の神経心理学の知見とも併せて、脳内の道具使用ネットワークにおける側頭葉の役割を見直すための重要な報告になると予期している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
昨年度末に代表者が職場を移動し、現所属先での新規のプロジェクトに従事したこと、および上述の研究実績に関わる論文作成を優先したことにより、昨年度までの取得データの解析や追加データの取得までには至っていないため。
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今後の研究の推進方策 |
上述の論文原稿についておよそ1-2か月以内に投稿完了見込みである。投稿処理と並行して新規実験のための動画刺激の作成を行い、年度内にfMRIを用いた実験のプログラムを実装して実験を行う予定である。また、昨年度内に道具のfamiliarityを脳活動パタンの類似性のパラメータとして用いた分析を行い、左大脳半球の古典的な道具ネットワーク(前頭葉、下頭頂小葉、中側頭回後部)がunfamiliarな(知識をあまりもっていない)道具を見た時によく活動するという興味深い結果を得ている。熟知する道具の種類が異なる日本人の実験参加者においても同様の傾向がみられるのかどうか、昨年度までの既取得データについてfamiliarity評定値を用いて同様の解析を実施する。
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