研究課題
若手研究
マッカイ対応は, 2次元商特異点を介して, 異なる数学的対象が結びつく現象であり, 現在では, 様々な特異点に対する類似・拡張が研究されている.この対応を拡張しようとする際には, 団傾加群という対象が現れる. また, 団傾加群の変異という操作から導かれる「団構造」が, 多くの数学分野に現れることが近年明らかになっている. 本研究では, 団傾加群と, その変異を理解することを通じて「マッカイ対応の拡張」および「特異点を介した数学分野の新たな結びつきの発見」を目指す.
実2次元のトーラス上に描かれた二部グラフを「ダイマー模型」と呼ぶ。3次元Gorensteinトーリック特異点の「射影的クレパント特異点解消」は、ダイマー模型に付随する箙の表現のモジュライ空間として記述できることが知られている。この特異点解消は一意的に存在するとは限らないが、箙の表現に対して定義される「安定性パラメータ」を取り替えることによって、すべての射影的クレパント特異点解消を構成することができる。安定性パラメータの空間は「部屋構造」を持っており、同じ部屋に属するパラメータからは同型なクレパント特異点解消が得られるが、壁を越えて別の部屋に移るとクレパント特異点解消の構造も変わり得る。今年度の研究では、トーリックcDV (compound Du Val)特異点の場合について、上記の部屋構造と壁越えをダイマー模型の組合せ論的性質を用いて考察した。その結果として、ダイマー模型上に定義される「ジグザグ道」の順序列を用いて、部屋構造・壁越えを記述できることを示した。さらには、ジグザグ道に注目することにより、壁越えをした際のクレパント特異点解消の変化、安定性条件を満たす箙の表現の変化も捉えられる事を示した。この結果は「ホモロジカル極小モデル理論」を用いて考察されていた、A型のcDV特異点の極小モデル(クレパント特異点解消)に関する性質と、ダイマー模型の組合せ論的性質を結びつけるものとなっている。本研究に関しては、論文を執筆し、arXivにて公開 (arXiv:2309.16112)した他、いくつかの研究集会・セミナーなどで発表を行った。
すべて 2024 2023 2022 2021 2020 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 5件、 招待講演 12件) 備考 (1件)
The proceedings of the 55th Symposium on Ring Theory and Representation Theory
巻: - ページ: 58-65
Advanced Studies in Pure Mathematics, McKay Correspondence, Mutation and Related Topics
巻: 88 ページ: 227-278
10.2969/aspm/08810227
Symmetry, Integrability and Geometry: Methods and Applications
巻: 18
10.3842/sigma.2022.030
The Quarterly Journal of Mathematics
巻: 73 号: 4 ページ: 1517-1553
10.1093/qmath/haac016
Mathematical Proceedings of the Cambridge Philosophical Society
巻: 174 号: 2 ページ: 247-271
10.1017/s0305004122000238
Illinois Journal of Mathematics
巻: 65 号: 1 ページ: 97-120
10.1215/00192082-8827655
https://sites.google.com/view/nakajima-math