研究課題/領域番号 |
20K14285
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分11010:代数学関連
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
南出 新 京都大学, 数理解析研究所, 特定助教 (60802717)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
|
キーワード | 遠アーベル幾何 / 完備離散付値体 / 絶対ガロア群 / 連正規閉部分群 / 強内的非分解性 / エラスティック性 / 単遠アーベル幾何 / 宇宙際タイヒミューラー理論 / アルティン・シュライアー理論 / 単遠アーベル的復元アルゴリズム / スリム性 / 強非分解性 / グロタンディーク・タイヒミューラー群 / 遠アーベル幾何学 / 局所体 / 単遠アーベル幾何学 |
研究開始時の研究の概要 |
数論に現れる代表的な体として、数体と局所体がある。数体の場合、その絶対ガロア群が、元の数体の構造を完全に決定することが知られている。(いわゆる、ノイキルヒ・内田の定理。)一方、局所体の場合、一般にこのような現象が成り立たないことが知られている。 従って、局所体の場合、「その絶対ガロア群が、元の局所体の構造をどれだけ知っているか」という問いは非常に興味深い問題である。実際、このような問いについて、これまでに様々な研究がなされてきた。 本研究では、(1) 群論的性質の解析、(2) 単遠アーベル幾何学 の視点から、先行研究の更なる発展を目指す。
|
研究実績の概要 |
(1) 2022年度は、まず(前年度から開始していた)「遠アーベル幾何的群論的性質」に関する澤田晃一郎氏、辻村昇太氏との共同研究を完成させ、プレプリントを公開した(論文投稿中)。本研究では、次のような成果を得た。遠アーベル幾何と密接に関連した群論的性質として、副有限群の強内的非分解性(=任意の開部分群Hに対して、その非自明正規閉部分群のHにおける中心化群が自明)、エラスティック性(=任意の開部分群の位相的に有限生成な非自明正規閉部分群は開)というものがある。辻村氏との前年度までの共同研究、及び、古典的事実により、例えば、(a)非アーベルな副有限自由群、(b)剰余標数p>0の完備離散付値体の絶対ガロア群、(c)ヒルベルト体の絶対ガロア群が強内的非分解性、エラスティック性をみたすことが知られていた。本研究では、この一般化として、(a)、(b)、(c)の概副p最大商の連正規閉部分群たちも強内的非分解性、エラスティック性をみたす、ということを示すことができた。また、「遠アーベル多様体」の代表例ともいえる、数体や(混標数)局所体上の双曲的曲線の配置空間に対し、その幾何的基本群、数論的基本群の連正規閉部分群たちも強内的非分解性をみたす、ということを示すことができた。
(2) 並行して、辻村氏と共同で、(混標数)局所体に対する単遠アーベル幾何的結果の一般化に関する研究も行った(論文準備中)。特に、局所体に対する様々な代表的な単遠アーベル幾何的結果を、特定の剰余無限な(混標数)完備離散付値体のクラスの場合に一般化することに成功した。
(3) また前年度に引き続き、星裕一郎氏、望月新一氏、山下剛氏と共同で、宇宙際タイヒミューラー理論のある改良版における明示的計算についての研究も行った(論文準備中)。例えば、(本研究の一つの鍵となる)ある状況下における数体上の楕円曲線の「高さ」の明示的上限を得た。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまでに、遠アーベル幾何に現れる様々な副有限群の強内的非分解性、エラスティック性を確認できてはいたが、それら副有限群の連正規閉部分群たちに対してもそのような性質を検証する、という方向性は当初想定していなかったものであり、興味深い展開であるように思う。また、局所体に対する様々な代表的な単遠アーベル幾何的結果を、(特定のクラスではあるものの)剰余無限な完備離散付値体のクラスの場合に一般化できたことも意義深いと思われる。
|
今後の研究の推進方策 |
2020-22年度に得られた結果の発展・応用・精密化を模索していく予定である。また、研究計画調書に記載した本研究課題に対するアプローチは大きな発展の余地があると思われるので、引き続き検証していきたい。
|