研究課題/領域番号 |
20K14304
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分11020:幾何学関連
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研究機関 | 東北大学 (2023) 東京大学 (2020-2022) |
研究代表者 |
鮑 園園 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (00710823)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 3-manifold / gl(1|1) / Alexander多項式 / Reidemeister torsion / lens space / グリッド図式 / Heegaard Floerホモロジー / グラフ / Kirby移動 / 三次元多様体の不変量 / spanning tree / Alexander polynomial / plane graph / weighted number / matrix tree theorem / skein relation / 三価グラフ / 結び目Floerホモロジー / 量子不変量 / diagram calculus |
研究開始時の研究の概要 |
空間に埋め込まれた閉曲線(結び目)を研究するために、様々な理論が作られてきた。例えば、数理物理や量子群を用いて結び目の量子不変量を構成することができる。OzsvathとSzaboはシンプレクティック幾何学のツールを使って三次元多様体および結び目のFLoerホモロジー理論を作った。本研究では、結び目や三価グラフのgl(1|1)ー量子不変量及びFloerホモロジーを研究し、両者の関連性を解明したい。
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研究実績の概要 |
量子トポロジーにおいて、結び目の量子不変量が定義されましたら、その不変量を空間グラフへ拡張し、それを用いて3次元多様体の不変量を構成し、さらにTQFTを構成するという流れがよく見られます。例えばWRT不変量はこのような理論です。TQFTは三次元多様体の不変量として重要であるだけでなく、写像類群への応用などもあり、低次元トポロジーにおいて非常に注目される研究対象です。
この研究の目的は三価グラフのgl(1|1)-量子不変量及びHeegaard Floerホモロジーを研究することです.Viroによって構成されたgl(1|1)-Alexander多項式(量子不変量)はHeegaard Floerホモロジーのオイラー標数であるため、Heegaard Floerホモロジーの量子トポロジー的な意味を考察するために、gl(1|1)-Alexander多項式に対応するTQFTは何かという疑問に答える必要があると感じました。
2023年度gl(1|1)-Alexander多項式を使って3次元多様体の不変量を構成しました。以下,この不変量をdelta(M)で表します.2024年度、delta(M)の式をさらに練り上げ,既存の不変量との関係を調べました.結果として,delta(M)はReidemeister torsionとほぼ同値であることを証明しました。そしてLens空間の場合のdelta(M)を計算し,これを用いてLens空間の分類問題を議論しました.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Reidemeister torsionは1930年代Reidemeisterによって定義された閉3次元多様体の不変量で,それを用いて3次元lens空間を完全に分類できます.その後MilnorはReidemeister torsionのAlexander多項式との関係を指摘,Turaevは一連の論文でReidemeister torsionの計算公式を詳しく与えました.この不変量は古典的不変量としてとても重要です.一方で1980年代以後,WRT不変量のような量子不変量が現れ,古典的不変量と量子不変量の関係が一つの基本問題として多く研究されています.例えば,Reidemeister torsionは量子不変量として定義できるか,対応するTQFTは何か,などの問題があります.
一方で,3次元多様体のHeegaard Floerホモロジーのオイラー標数はReidemeister-Tureav torsionであることが知られています.2024年度の研究では,Reidemeister torsionはgl(1|1)-量子不変量とDehn手術から構成されたdelta(M)と同値であることを示しました.つまり,Reidemeister torsionはWRT不変量と同様な手法で再構成することができることを解明しました. 今後,delta(M)に対応するTQFTを調べる予定です.この研究が順調に進めば,OzsvathとSzaboによって構成された3次元多様体のHeegaard Floerホモロジーに対応するTQFTとの関係を考えたいと思います.以上により,本研究課題は概ね順調に進展していると考えます.
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今後の研究の推進方策 |
今後,delta(M)に対応するTQFTを調べる予定です.境界付き3次元多様体に対応するdelta(M)はReidemeister torsionとの関係を調べ,そして写像類群への応用を考える予定です.
1980年代WittenはTopological Quantum Field Theory(TQFT)を紹介し,その後ReshetikhinとTuraevはそれに基づき,結び目の量子不変量と量子群を用いてTQFTを構成しました.この方法はのちにTureavによって一般化され,modular categoryからTQFTを構成する理論を作りました.現在これに対応する不変量はWRT不変量と呼ばれます.近年,CPT不変量と呼ばれる不変量がさらに構成され,WRT不変量の精密化になります.CPTの構成において,objectのquantum dimが0など良くない性質を持つcateogryからも不変量を作ることができるようになります.
delta(M)の定義では,CPTの構成法を利用しました.今後delta(M)に対応するTQFTを考えるとき,克服すべき問題点を洗い出し,先行研究を参考しながら解決していきたいと考えます.特に,Blanchet, Costantino, GeerとPatureau-Mirandによって構成された一連のnon-semi-simple TQFTは重要な参考文献になると思います.
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