研究開始時の研究の概要 |
Thompson群Vは, Cantor集合の対称性を記述する群であり, 無限群・有限表示群・単純群の性質を併せ持つ珍しい群である. 本研究ではこの群Vについて, 幾何学的な観点から研究を行う. 具体的には, 非正曲率の距離空間への群作用の新たな構成法を研究する. 特にVのCantor集合への作用の性質をうまく反映している群作用の構成を目指す. 関連する研究領域である低次元トポロジーへの展開も視野に入れて研究を行う.
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研究実績の概要 |
本研究では, Thompson群とその一般化を対象に, 幾何学的な観点から研究を行っている. Thompson群にはF, T, Vの3種類があり, それぞれ単位区間, 単位円, カントール集合の自己同相写像のなす群として記述される. 本研究では特にCAT(0)空間と呼ばれる, 非正曲率距離空間への群作用について研究を行っている. 本年度の主な結果は次の通りである. 昨年度の研究に引き続き、Thompson群Tの一般化であるHigman-Thompson群T_nとその一般化について研究をおこなった. Higman-Thompson群T_nはTの「n分岐版」であり, この群もまた, 単位円の自己同相写像のなす群として記述される. 今年度の研究では, T_nをさらに一般化した, 円の自己同相写像のなすring群とよばれる群に注目した. この群の一般的な性質は研究されていないため, TやT_nの持つ重要な性質をどの程度持つかという観点から, 次の研究を行った. (1)交換子部分群が単純群となるための, 円への作用に関する条件を考察した. (2)ring群が群同型の意味で非可算無限個あるかを調べた. (3)昨年度得られたT_nが固定点性質を持つための条件を一般化して, ring群が有限次元CAT(0)へのsemi-simpleな作用に関して固定点を持つための条件を記述した. 結果の一部に関し、OISTワークショップ「New trends of conformal theory from probability to gravity」で講演を行った. 国内外での研究集会や, オンラインでの議論を通し, 関連する最新の研究に関する情報収集や, 他の研究者との議論を行った.
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