研究課題/領域番号 |
20K14325
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分12010:基礎解析学関連
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研究機関 | 東京大学 (2022-2023) 大阪大学 (2020-2021) |
研究代表者 |
大島 芳樹 東京大学, 大学院数理科学研究科, 准教授 (10746936)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | Lie群 / 表現論 / 調和解析 / 等質空間 / 余随伴軌道 / 分岐則 |
研究開始時の研究の概要 |
ある幾何学的な対象に、Lie群の作用つまりある連続的な対称性があれば、そこから取り出された線形空間にもLie群の作用があり、Lie群の表現が得られる。特に群作用をもつ空間の最小単位である等質空間について、その関数空間として得られる表現の既約表現への分解を考えることは、表現論・調和解析において重要な問題である。本研究では、等質空間上の関数空間の既約表現への分解、またより一般に誘導表現の既約表現への分解について、余随伴軌道の方法とよばれるLie環の双対空間への作用を通した理解を進める。
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研究実績の概要 |
2022年度までに引き続き実簡約Lie群のユニタリ表現の制限と誘導に関する研究を行った.Gを実簡約Lie群,Hをその局所代数的な閉部分群とする.以前にHがユニモジュラーのときに,自明表現からのL^2誘導L^2(G/H)の分解に寄与するGの既約表現の集合の漸近錐が,G/Hの余接束の運動量写像の像で与えられることがわかっていた(Benjamin Harris氏との共同研究).2023年度はこの結果の直線束の場合やHがユニモジュラーでない場合への拡張として,昨年度に得られた結果の精密化を行った.具体的には,Hのユニタリ指標χがHの冪単根基上で自明であるという仮定の下で,ユニタリ誘導Ind(χ)に寄与するGの既約ユニタリ表現の無限小指標が複素運動量写像の像をユニタリ指標のパラメータχだけずらした集合に含まれることを示した.また同様のχの仮定の下で,運動量写像の像が楕円型余随伴軌道からなる空でない開集合をもつとき,Ind(χ)の離散スペクトルが存在することを示した.さらに,運動量写像の像をχずらした集合が双曲部分が一定であるような空でない開集合をもつときに,十分大きな自然数nについてInd(χ^n)の離散スペクトルが存在することを示した.これらの結果をプレプリントとしてまとめた. また以前に,Zuckerman導来関手加群Aq(λ)の対称対に関する制限が離散分解するという小林俊行氏によって導入されたクラスについて,明示的な分岐則の公式をD加群の方法などを用いて求めたが,2023年度は,この分岐則の明示公式と表現の直積分の波面集合についてHarris氏と得た結果等を合わせると表現の制限に対応する楕円型余随伴軌道の制限写像の像を決定できることに気づき,研究集会でその内容について講演を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度までに得られていた一般の等質空間X上の直線束に対するPlancherel測度の台の漸近錐とXの余接空間の運動量写像による像との関係について,2023年度はより精密な結果を得た.特に誘導表現に寄与する既約ユニタリ表現の無限指標と複素運動量写像の像との関係が明らかになり,1次元表現からの誘導の離散スペクトルの存在について運動量写像の像と関連する新しい2つの十分条件を得た. また表現の制限についても,離散分岐則の具体形から余随伴軌道の制限写像による像を計算できることがわかり,楕円型余随伴軌道の像を多くの例について決定した.
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は一般のユニタリ表現からの誘導や離散分解しない表現の制限に対して,分解に寄与する既約表現の無限小指標と,対応する余随伴軌道や運動量写像との関連を調べる.また2023年度までに得られた,誘導表現に離散スペクトルが存在するための複数の十分条件の関係を整理し,具体例への適用を行えるよう整備する. 研究遂行のために研究集会に参加して情報交換を行う.得られた結果を論文として発表し,また研究集会でも研究発表を行う.
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