研究課題/領域番号 |
20K14332
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分12010:基礎解析学関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
久保田 直樹 日本大学, 理工学部, 准教授 (20754972)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | フロッグモデル / 時間定数 / ファーストパッセージパーコレーション / ランダムポテンシャル中の乱歩 / 確率論 / 不規則媒質中の乱歩 |
研究開始時の研究の概要 |
近年におけるインターネットの急速な発達は,様々な面で人々の生活を豊かにしてきた.その半面,“情報拡散”という大きな社会問題も生じている.情報拡散の予測・制御への応用を視野に,本研究では“環境変化がモノの広がりに与える影響”を定量的に調べることを目的とする.特に研究対象として,インターネット上の情報拡散を記述する『フロッグモデル』と呼ばれる数理モデルを扱う.このフロッグモデルでは,正方格子上にでたらめに配置された“情報伝達者”が空間の中を動き回ることで,1つの情報を共有・拡散していく.そこで本研究では,「情報伝達者の初期配置が情報拡散の度合にどの程度影響を与えるのか?」を詳しく解析する.
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研究実績の概要 |
今年度は主に,フロッグモデルにおいてカエルの拡散度合の狭義単調性を検証した.また,それに関する研究成果の発表も行った.これらの具体的な活動実績は以下の通りである: 1.これまでの研究を踏まえ,本研究の最終課題「フロッグモデルにおける拡散度合の差異の解析」に着手した.特に,カエルの初期配置がベルヌーイ分布に従う場合に焦点を当て,「ベルヌーイ分布のパラメータの差が拡散度合にどの程度影響を与えるのか?」について研究を行った.その結果,2つの異なるパラメータにおける拡散度合の差は上と下からリプシッツ的に評価されることが分かった.現在,この結果を論文としてまとめており,近いうちに論文誌に投稿予定である.また,竹居正登氏(横浜国大)と共同で,フロッグモデルに深く関連するファーストパッセージパーコレーションについても類似研究を行った.その結果は論文としてまとめ,すでに論文誌に掲載された. 2.2つの国際研究集会「Probability and Analysis on Random Structures and Related Topics」と「Workshop on Probabilistic Methods in Statistical Mechanics of Random Media and Random Fields 2023」において,それぞれ「Strict comparison for the Lyapunov exponents of the simple random walk in random potentials」と「Lipschitz-type estimates for the frog model with the Bernoulli initial configuration」というタイトルで,本研究課題に関する講演を行った. 3.中央大学で開催された「日本数学会2023年度年会」において,「フロッグモデルの時間定数におけるリプシッツ型評価」というタイトルで講演を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目標は,「フロッグモデルにおける拡散度合の差異を精密に評価すること」および研究課題に関する情報収集であった.まず,情報収集においてはやや不十分であったと思われる.本年度の国内研究集会は対面で開催されることが多かったため,研究発表やそれに関する内容について直接議論する機会を十分に確保することができたと考えている.一方で,海外出張においてはいまだコロナウイルス感染症の影響が残っており,大学業務や家庭への影響を考慮すると,国外研究集会に参加し情報収集することは困難であった.以上の理由から,情報収集という観点においては,進捗状況はやや不十分であったと結論付けた. 次に,「フロッグモデルにおける拡散度合の差異の精密評価」という点においては,計画よりも若干早く進展していると考えている.その理由としては,カエルの初期配置がベルヌーイ分布に従う場合において拡散度合の差異を実際に精密評価できたことが挙げられる.フロッグモデルにおいてこのような先行研究は一切なく,研究開始当初は,カエルの初期配置の分布がどんなに単純なものであったとしても拡散度合の差異を精密評価することは簡単ではないだろうと予想していた.この状況を打破するきっかけとなったのが,前年度に行った,ベルヌーイ分布に従うポテンシャル中を運動する乱歩に対する一連の研究であった.本年度はそこで得られた知見・手法をフロッグモデルに応用できるか試みた.その結果,カエルの初期配置がベルヌーイ分布に従う場合においては,ベルヌーイ分布のパラメータの差が直接カエルの拡散度合の差として現れることがわかった. 上記のように,情報収集という観点からはやや不十分な進捗状況であるが,研究の進展という点に関しては計画より順調に進んでいるため,現段階における本研究課題の進捗状況は「おおむね順調に進展している」と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
現在までの進捗状況で述べたように,カエルの初期配置がベルヌーイ分布に従うフロッグモデルにおいては,本研究課題の目的を概ね達成することができた.そこで今後の研究の推進方策は,「ベルヌーイ分布における拡散度合の解析手法を一般の初期配置分布の場合に応用すること」である.ベルヌーイ分布における拡散度合の解析において鍵となったのは,「Russoの公式」と「カエルの初期配置を1点だけで変化させたときに拡散度合がどの程度変化するのか?」という点であった.これらの2点は,「カエルの初期配置がベルヌーイ分布に従うこと」と「比較するベルヌーイ分布のパラメータが(任意の)一定値以上であること」に強く依存している.したがって,ベルヌーイ分布における解析手法を一般の初期配置分布の場合へ直接応用することは難しいと考えている.この問題点を踏まえ,以下の内容に焦点を当て今後の研究を推進していく: 1.一般の初期配置分布においては,1点に複数匹のカエルが配置される可能性がある.ただ,「(配置数に関係なく)カエルの有無」のみを考えれば,ベルヌーイ分布として捉えることができる.このような捉え方をすることで,(精密ではないかもしれないが)一般の初期配置分布においても拡散度合の差異を評価できるのではないかと考えている.特に,単純に「初期配置分布の変化が拡散度合に真に影響を与えるのか?」を一般の初期配置分布の場合において検証する. 2.上で述べたように,ベルヌーイ分布に従う初期配置のみを考える場合,「パラメータが一定値以上」という条件を仮定した.したがって,「パラメータを0に近づける(つまり,カエルを配置する確率を小さくしていく)場合」において,拡散度合がどのように変化するのかは未解明である.そこで,この問題に取り組むことでベルヌーイ分布における拡散度合をより深く理解し,それをより一般の場合の解析に役立てる.
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