研究開始時の研究の概要 |
本研究では一階微分項に非有界係数を持ち, 非斉次項がルベーグ空間Lp,q(空間指数をp, 時間指数をqとする)に属する完全非線形放物型方程式に対する粘性解の正則性(微分可能性や可積分性)理論及び一意性定理を構築及び整備する. 偏微分方程式論において, 弱解の正則性理論や一意性定理は重要な基盤的研究対象である. しかし, 先行研究では一階微分項係数が不連続・非有界で特異点を持つ非発散型の放物型方程式に関する粘性解理論の研究はほぼ皆無であり, Lp,q関数を非斉次項に持つ放物型方程式に対して通常の粘性解理論を本質的に適用できない. 既存の証明法ではギャップが大きいためその解決を目指す.
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、微分幾何学、数理ファイナンスを含む最適制御理論や確率微分ゲーム理論等で発展してきた粘性解理論に関して、非斉次項(外力項)が非等方性をもつルベーグ空間Lp,q(空間指数をp, 時間指数をqとする)に属する完全非線形一様放物型偏微分方程式に対する粘性解の存在及び最大値原理等の基礎理論を構築・整備することである。令和4年度は、前年度と同様にLp,q函数を非斉次項として持つ完全非線形放物型方程式に対する粘性解の存在、安定性及び正則性(C1,α評価及びW2,1,p,q評価)を考察した。さらに、これらの応用として数理ファイナンスや微分ゲームにおける近似最適制御の構成法を考察した。具体的 に、A. I. Nazarov(arXiv:1507.05232, 2015年)によって示された線形方程式の強解に対する最大値原理、及びDong-Krylov(Calculus of Variations, 2019 年)による強解に対するW2,1,p,q評価を応用して、非斉次項がLp,q空間に属するプッチ方程式の粘性解の存在、及び最大値原理を考察した。さらに、同様な方程式に対するC1,α評価及びW2,1,p,q評価については、単純化された極限方程式として、二階微分項に関して凸性を持つ方程式を考え、その解の評価を元の方程式に引き戻す方法を検討した。将来的にこれらの評価を用いて、近似最適制御を含む、微分ゲームや数理ファイナンスへ応用するために既存の結果を精査した。
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