研究課題/領域番号 |
20K14351
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分12020:数理解析学関連
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研究機関 | 釧路工業高等専門学校 |
研究代表者 |
若狭 恭平 釧路工業高等専門学校, 創造工学科, 講師 (60783404)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 非線形波動方程式 / 臨界指数 / 解の爆発 / 解の最大存在時刻 / 時間大域解 / 双曲空間 / ライフスパン / 非線型波動方程式 |
研究開始時の研究の概要 |
波動方程式は、様々な波動現象を記述する偏微分方程式として知られている。実現象の多くは、非線形偏微分方程式として記述され、数学的には「解の爆発」と呼ばれる、解が時間大域的に存在しない、興味深い現象が起こる。非線形波動方程式に対しては、F.John (1979) による先駆的な結果があり、数多くの結果が生み出されたが、単純な方程式に対する研究がなされているのが現状である。また、実現象に近い方程式はもはや単純な形ではないため、現状の爆発理論の応用が難しいこともある。本研究では、解析学における様々な理論を踏襲し、一般的な状況下での非線形波動方程式に対する、新しい解の爆発理論を構築することが目的である。
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研究実績の概要 |
昨年度は、特性方向の重み付き非線形項をもつ1次元波動方程式の解の最適な存在時刻の評価に関する研究を行った。初期速度の積分量がゼロか非ゼロの場合によって、ホイヘンスの原理が成立するか否かが判明するため、最大存在時刻の評価に違いが生じることが特徴である。 本年度は、特性方向の重み付き非線形項をもつ波動方程式と関連がある、双曲空間における非線形波動方程式の研究を行った。双曲空間上では、波動方程式の解は指数関数的な減衰をもつことから、冪型の非線形項を考えると、任意の非線形性で時間大域解が得られる。非線形問題を考える上では、時間大域解の存在と解の爆発を分ける、臨界指数が現れる現象が最も興味深い。X. Zhang 氏(浙江大学)とC. Wang 氏(浙江大学)らは、対数非線形項をもつ波動方程式の解析を行い、臨界指数が得られることを指摘した。線形解の指数関数的な評価を対数項に代入すると、特性方向の因子が出現し、その可積分性によって解が時間大域的に存在するか否かが示されることが鍵である。同氏らの論文では、最も興味深い非線形性が臨界の場合の解の挙動の結果が示されていない。また、解の最大存在時刻の評価も得られていないため、これらを解明することを目標として現在研究を行っている。 更に、前述の特性方向の重み付き非線形項をもつ波動方程式の解析を多次元空間へと拡張する試みも行っている。2次元空間の場合は、1次元空間の場合と同様に初期速度の積分量が非ゼロかゼロかによって、特性方向の因子の減衰度が変化することがわかっている。積分量がゼロの場合は減衰度の指数が改良され、特性方向の積分が可積分となり、ホイヘンスの原理が成立するのである。非線形項に特性方向の重みを導入することで、解の最大存在時刻の評価がどのように変化するのかを調べることが研究の目的である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
双曲空間上の対数非線形項をもつ波動方程式の解析では、F.John(1979)による解の各点評価に関する逐次近似法によって研究を進めている。しかし対数項の特徴から逐次近似法を適用することが難しいため、現在この困難さを克服するための工夫を考察中である。解の爆発に関しては、解の積分量を中心とした汎関数法も適用できるため、これをもとに計算を進めている。また、双曲空間からユークリッド空間に引き戻した場合、得られる方程式は、特性方向の重み付き非線形項をもつ波動方程式となるため、1次元の場合に行った結果を参考にしながら解析を進めている。 2次元空間における特性方向の重み付き非線形項をもつ波動方程式の研究では、まず、線形解に対する最良な減衰評価を得た。積分量だけでなく、モーメントを考慮に入れた評価式が完成し、現在は非線形評価の考察を行っている。波の特性方向の因子は二つあるため、それぞれにパラメータを導入し、計算を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、双曲空間上の対数非線形項をもつ波動方程式の解析について研究を行いたい。前述のとおり、解の各点評価をベースとした逐次近似法や汎関数法を用いながら考察を行う。また、双曲空間上で特性方向の重みを導入した方程式も臨界問題の1つとして考えられるため、3次元空間における方程式の解析も同時に行う。 2次元空間の場合には、モーメントまで考慮に入れた線形解の評価が完成している。特性方向の重みを考える上では、一般の初期値に対する結果がそもそも存在しないため、第一にこの場合について研究を行う。その後は、積分量がゼロか非ゼロの場合、モーメント量まで込みでゼロの場合を考えるなど段階的に計算を進める。
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