研究課題/領域番号 |
20K14359
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分12040:応用数学および統計数学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
佐藤 寛之 京都大学, 情報学研究科, 特定准教授 (80734433)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 最適化 / リーマン多様体 / 共役勾配法 / レトラクション / p-ノルム / シンプレクティックシュティーフェル多様体 / 指数写像 / グラスマン多様体 / 最急降下法 / リーマン幾何学 / 応用数学 / 数理工学 |
研究開始時の研究の概要 |
人工知能・機械学習などに現れる問題に対して,リーマン多様体上の最適化が有効であることが広く認識され始めており,そうしたビッグデータを伴う大規模な最適化問題を効率よく求解できるアルゴリズムを発展させることが重要である.本研究では,大規模な最適化問題に有効な共役勾配法や確率的勾配法をリーマン多様体上に拡張し,その収束性や実用性を,理論的な証明と数値的な実証によって保証する.さらに,こうした手法を応用し,機械学習,制御工学,数値線形代数など,他分野の諸問題に対する新しい求解アルゴリズムを開発する.
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研究実績の概要 |
令和5年度は,リーマン多様体上の具体的な最適化問題について,その数理と解法を議論し,結果をまとめた2編の論文を発表した. 一つは,ユークリッド空間上の p-ノルム(ただし p > 1)の意味で定義される単位球面に関するリーマン幾何学的な性質を詳しく解析した研究である.さらに,その上の最適化問題を解くためにレトラクションやベクトル移動などの写像の具体的な計算法を導出した.また,これらの結果の応用例として,球面上の非負制約付き最適化問題や Lp 正則化に関連する最適化問題を議論した.前者は非負主成分分析を,後者は Lasso 回帰や箱型制約付き最適化問題をその具体例として含み,いずれも重要な問題である. もう一つの研究では,シンプレクティックシュティーフェル多様体上の最適化問題に対する共役勾配法を提案し,その性質についての数学的議論を行った.こうした問題はシンプレクティック固有値問題や量子力学への応用があり重要であるにもかかわらず,まだ研究があまりなされていなかった.具体的には,一般的な場合の解法としてはあまり収束が速くない最急降下法が提案されているに留まっており,ニュートン法のような高速な手法は特殊な場合に適用できる形でしか提案されていなかった.そこで,本研究ではシンプレクティックシュティーフェル多様体上の共役勾配法を提案した.この提案手法を実装するために,レトラクションやベクトル移動の計算方法を明示的に導出したことも本研究の貢献である.また,シンプレクティック固有値問題に対して既存手法である最急降下法と提案手法である共役勾配法を適用して解く数値実験を行い,提案手法が既存手法より優れた性能を発揮することを実証した. これら2つの研究はいずれも,具体的な多様体上の最適化問題の求解に大きく貢献するものである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」で述べた通り,令和5年度は具体的なリーマン多様体上の最適化問題についての研究を展開することができた.令和4年度は多様体上の共役勾配法について一般的な新しいクラスについての研究を完成させ,本研究課題の一つの柱である理論的研究を大きく進展させたが,これをシンプレクティックシュティーフェル多様体上の最適化問題にも適用できるよう理論を整備するなど,令和5年度は本研究課題のもう一つの柱である応用研究を推進することができた.
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は,多様体上の多目的最適化問題についての共役勾配法の理論を完成させ,論文として発表することを目指す.また,実際に数値実験を行うことで,その実用的な応用も見据えた研究の推進を目指す. さらに,多様体上の最適化で広く用いられるレトラクションによる曲線探索についての新たなアプローチを提案し,レトラクションの計算回数を削減するなど,効率的な解法の研究を進める計画である.
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