研究課題/領域番号 |
20K14361
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分12040:応用数学および統計数学関連
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
飯田 渓太 大阪大学, 蛋白質研究所, 准教授 (10709653)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
|
キーワード | 確率過程 / 遺伝子発現 / シングルセル / 確率過程論 / 超幾何関数 / 真核生物 / Gene expression / Probability theory / Integral transform / Hypergeometric function / Bayes theory |
研究開始時の研究の概要 |
生物学と情報科学の融合による技術革新は、個体の全遺伝子データを一細胞レベルで取得可能にした。しかし、生物データに内在するノイズは構造が複雑であり、特に、遺伝子の転写のオン・オフ状態の遷移のゆらぎとその遷移確率の同定は、遺伝子発現の分子機構を理解する上で重要な課題であるにも関わらず、直接的な計測法は存在しない。この問題に対し、本研究では確率・統計理論の立場から、遺伝子の転写のオン・オフ遷移確率をデータから推定する理論を構築し、大腸菌および出芽酵母の代謝系遺伝子の転写制御に適用することで、原核生物と真核生物に共通する転写制御の機構解明を目指す。
|
研究実績の概要 |
2022年度は、遺伝子発現の確率モデルの生物パラメータの推定問題に取り組み、原核生物および真核生物のシングルセル遺伝子発現データから、分子の崩壊係数以外のすべてのモデルパラメータ(転写のオンオフの遷移確率、最大転写効率、転写バーストサイズ)をロバストに同時推定する方法を開発した。これまでは、転写のオンオフの遷移確率のみが推定の対象であったが、この方法では最大転写効率などが公開データなどから事前にわかっている遺伝子にしか適用できなかった。そこで、ベイズ事前確率を導入し、さらにモデルパラメータに細胞間での多様性を考慮することで、事前知識の必要性を大幅に緩和することができた。その結果、従来以上の推定精度を実現することができ、確率モデルとパラメータ推定法の汎用性が向上した。今後は、単一細胞RNAシークエンスや空間トランスクリプトームなどの網羅的な遺伝子発現データからも生物パラメータを推定する問題に挑戦する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は本研究の応用範囲を広げる上で重要な数理的発見があり、次の生物学的課題も明確となった。そのため、順調に進展していると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度は、本研究で開発した遺伝子発現の確率モデルとパラメータ推定法を用いて、単一細胞RNAシークエンスや空間トランスクリプトームなどの網羅的な遺伝子発現データから生物パラメータを推定する問題に挑戦する。従来の単一細胞トランスクリプトームの分類手法は、ほとんどが発現量にもとづくものであった。しかしながら、発現量のみにもとづく生物学的解釈は単一的にならざるを得ず、生命の複雑性を捉えるには、転写調節、細胞内シグナリング、生化学プロセスなどの複数の観点からのデータ解析が必要である。本研究では、シングルセルデータから転写のオンオフ確率をゲノムワイドに推定できるだけの汎用的な方法を開発することで、転写調節の観点から細胞分類を行うことを目指す。ベイズ推定における高速かつ高精度な計算方法を確立することは今後の優先課題である。推定したパラメータの妥当性については、申請者の所属する大阪大学蛋白質研究所細胞システム研究室の実験系メンバーらと議論する予定である。
|