研究課題/領域番号 |
20K14367
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分12040:応用数学および統計数学関連
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研究機関 | 福知山公立大学 |
研究代表者 |
渡邉 扇之介 福知山公立大学, 情報学部, 准教授 (80735316)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | Max-plus代数 / 量子ウォーク / 固有値 / 直交性 / 相関付きランダムウォーク / セルオートマトン / 交通流モデル / 固有ベクトル / 超離散系 / 有向グラフ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は,現在までに構築されてきた量子コンピュータの基礎理論の1つである量子ウォークの理論をmax-plus代数という特殊な代数の上で再構築し,そこで得られた結果がもたらす量子ウォークへの貢献を調べるというものである.Max-plus代数は,超離散化と呼ばれる手法を施すことで得られる代数系で,元の方程式等が持つ“極端な”性質を浮き彫りにすることが経験的に知られている.本研究はこの超離散化によって得られるmax-plus代数を用いて量子ウォークの本質に迫り,量子ウォークとmax-plus代数のどちらとも強い関係性を持つセルオートマトンやグラフ理論への応用を目指す.
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研究実績の概要 |
量子ウォークモデルのmax-plus代数における類似物の構成については,その挙動や得られる状態の特徴量の視点で適切なモデルが得られたと判断している.しかし,量子ウォークの時間発展を記述する行列はユニタリー行列であることに対し,構成したモデルにそのような特徴はない.Max-plus代数においてはユニタリー性に対応する性質,特に直交性を議論することが困難である.2022年度において,max-plus代数におけるベクトルの直交性に関する基礎理論の構築を目指し,2023年度にも引き続き研究を進めることで,max-plus代数における対称行列の異なる固有値に属する固有ベクトルが独立であり,さらに直交することを示した.この結果についてはLinear and Multilinear Algebraに掲載された. また,2022年度からスタートしているmax-plus代数における量子ウォークモデルの応用に関する研究では,初歩的な量子ウォークとしても知られる相関付きランダムウォークの時間発展から得られる離散方程式に対して,連続極限を取ることで得られる方程式を導出した.相関付きランダムウォークは確率的な遷移をするモデルであるが,その確率を変化させることで3つのよく知られる微分方程式が得られることがわかった.この結果については2024年度に国際会議での発表と論文誌への投稿を計画している.相関付きランダムウォークについては,2022年度にmax-plus代数との関連を述べており,通行を制御された交通流モデルへの応用が可能であることを示している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画を遂行するために必要なmax-plus代数における基盤研究に時間がかかり,量子ウォークに関連する応用研究の進捗がやや遅れている.また,2023年度に第三子が誕生したことで研究成果の発表,特に国際会議への参加が難しかった.
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今後の研究の推進方策 |
2023年度では,量子ウォークとグラフ上のゼータ関数の関係のmax-plus類似の構築を目指したが,グラフの隣接行列の行列式を用いた固有多項式と固有値やグラフの閉路を考えることが重要なグラフ上のゼータ関数をmax-plus代数で考えるためには多くの障害があり,基礎理論の整備が多く必要となる.よって,2024年度は通常2次元で議論される量子ウォークの3次元版のmax-plus代数における類似物を構成することを目指す.ここでは,2023年度の成果であるmax-plus代数におけるベクトルの直交性の結果が役に立つと考えている.
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