研究課題/領域番号 |
20K14382
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分13020:半導体、光物性および原子物理関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
佐藤 駿丞 筑波大学, 計算科学研究センター, 助教 (90855462)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 超高速現象 / アト秒物理 / 非線形光学 / 第一原理計算 / 超高速現 / 光物性 / 時間依存密度汎関数理論 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究課題では、高強度フェムト秒レーザーを照射した際の固体中の非平衡電子ダイナミクスを第一原理計算によりシミュレーションし、電子が光の衣を纏った光ドレスト状態の形成に伴うバンド構造の変化を理論的に解析する。第一原理計算から電子ダイナミクスに関する微視的な情報を引き出すことにより、光が誘起する物質の電子構造変化の微視的起源を解明し、光によって物質の電子構造を制御するための微視的理論を構築する。さらに、光による電子構造制御理論を発展・応用することで、光によって物質の輸送特性や光学特性を制御する方法を探求し、新奇な光物性制御手法の提案を行う。
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研究実績の概要 |
我々は、時間依存密度汎関数理論(TDDFT)に基づく第一原理計算により、高強度な光が固体中に駆動する微視的な電子ダイナミクスを解析している。当該年度は、実験グループとの共同研究により、2次元物質であるMoSe2に対してアト秒過渡吸収分光を行うことで超高速電子ダイナミクスを調べた。TDDFT計算により過渡吸収スペクトルを解析したところ、異なる元素に対応する吸収端において定性的に異なる応答が起こることが明らかとなった。さらに微視的な解析を進めたところ、Se原子の吸収端の過渡光学応答は独立粒子的な応答が支配的であるのに対し、Mo原子の吸収端の過渡光学応答は集団運動的な応答が支配的であることが分かり、これらの質的に異なる現象が同じ時間スケールで共存していることが明らかとなった。 当該年度はさらに、量子マスター方程式を用いた電子ダイナミクス計算を用いて、テラヘルツ(THz)領域におけるグラフェンからの高次高調波発生の微視的機構を解析した。その結果、従来の熱力学的模型に基づく理解を超えて、THz電場の下での非平衡定常状態が高次高調波発生において重要な役割を果たしていることが明らかとなった。さらに、THz光と中赤外(MIR)光を組み合わせることでグラフェンからの高次高調波発生を増強するための理論的研究を行った。その結果、THz光とMIR光の非線形結合によって高調波発生を増強あるいは抑制する微視的機構があることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第一原理計算により二次元物質の過渡光学応答の微視的機構を解明した。また、テラヘルツ光と中赤外光を組み合わせた駆動によりグラフェンからの高次高調波発生を増強するための機構を解明した。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き時間依存密度汎関数理論に基づく第一原理計算により、光によって物質の電子構造を改変し、物性を制御する方法論を構築していく。また、緩和効果を取り入れた量子マスター方程式の計算コードの開発を進める。
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