研究課題/領域番号 |
20K14412
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分13030:磁性、超伝導および強相関系関連
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 (2022) 東京工業大学 (2020-2021) |
研究代表者 |
村上 雄太 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 研究員 (70845289)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | 非平衡物理 / 光誘起相転移 / 非平衡物性 / 強相関電子系 / 秩序相 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、超伝導相(SC)などの秩序相を巡り様々な興味深い光誘起現象が報告されている。特に、銅酸化物LESCOや鉄系超伝導体FeSeでは光励起により数ピコ秒の長時間におよびSC相を彷彿させる特異な非平衡状態が観測された。従来の理論ではこれらの現象の解析のため励起後の時間発展を直接追う方法が用いられるが、手法の制限から短時間の計算しか出来ず、現象の十分な理解に至っていない。本研究では、これらの長時間出現する状態をある種の非平衡定常状態と捉え、軌道やフォノン自由度を含むより現実的な有効模型の定常状態の解析を可能にする非平衡グリーン関数法を用いた新手法を開発し、秩序相の光誘起の起源解明と探索を目指す。
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研究実績の概要 |
Mott絶縁体を光で励起すると複数タイプの光キャリアが生成される。これらのキャリアの寿命はギャップが大きい場合には非常長くなることが知られている。そのため、緩和過程においてはまずキャリアの数は変わらず、キャリアの温度が低下することが考えられる。我々は、この様なキャリアの数が固定され、温度が低下した状態でどのような非平衡状態が実現するかに興味があり、研究を推進してきた。前年度では、い一次元の拡張Hubbard模型の非平衡状態を数値計算によって求め、その非平衡相図を決定した。その際に、いくつかの自由度が互いに独立ではないかという傾向を得た。そこから着想を得て、当該年度の研究では、ギャップが大きい極限に注目し、非平衡状態の波動関数のの厳密な波動関数の表式を導出することに成功した。この波動関数は、平衡系で有名な小形・斯波状態と呼ばれる状態の自然な拡張になっており、様々な非平衡状態の物性に関する重要な洞察を与える。まず、この標識はspin-charge-ηspin分離の帰結を与えており、一次元の平衡系で議論されるspin-charge分離の自然な拡張になっている。また、我々の研究により、化学ドープと光ドープが与えるスピン自由度へ与える影響が同じであることもわかった。さらに、非平衡秩序状態としてはηペアリング状態と呼ばれる非平衡超伝導状態と特異な光誘起電荷秩序状態が存在すること見いだした。前者は、クーパーペアがπの中心運動量を持つ特殊な状況である。後者の電荷秩序相は、ストリング秩序という特殊な秩序パラメータを有しており、トポロジカル 状態の一つになっている。以上の研究に加え、量子多体系の非平衡状態を記述する上で重要になりうるデータ圧縮の手法に関する共同研究にも参画し、圧縮が可能であり、計算コストが削減できる可能性も見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1次元強相関電子系において、光誘起の準安定状態に関する厳密な表式を得たことで、非平衡状態に関する知見が飛躍的に向上した。ここで得た視点は、様々な系での非平衡状態を議論する上での一つの基盤を与えており、今後の研究の軸が形成できた。
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今後の研究の推進方策 |
一軌道系の一次元系の物理がよく分かったので、i)多軌道系およびii)二次元系への拡張をおこないたい。特に、ii)を研究するためにladderから出発し系統的な議論を行なっていきたい。 我々の得た、spin-charge-ηspin分離の描像がどの様に変化するのかを系統的に調べていく。
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