研究課題/領域番号 |
20K14413
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分13030:磁性、超伝導および強相関系関連
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
家永 紘一郎 東京工業大学, 理学院, 助教 (50725413)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
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キーワード | 2次元超伝導体 / 熱電効果 / 超伝導-絶縁体転移 / 量子渦(渦糸) / 超伝導ゆらぎ / 異常金属状態 |
研究開始時の研究の概要 |
超伝導体の2次元薄膜に磁場を印加すると超伝導から絶縁体への量子相転移が生じる.臨界点近傍において,乱れの強い系では量子化磁束(渦糸)のボース凝縮(BEC)が予想され,乱れの弱い系では2次元系では許されないはずの絶対零度の金属状態が観測されている.これらは強相関効果などがない単純な系で生じ,臨界点近傍の強い量子ゆらぎが起源とされるが,電気抵抗測定以外の実験はほぼない.本申請では,ゆらぎを敏感に検出できる熱電効果測定用いて,極低温下での超伝導ゆらぎを精密評価し,渦糸BECの実験的検出,および金属相の起源解明に挑む.本実験で得られた量子臨界現象の知見は,より複雑な系の解釈へも波及すると予想する.
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研究実績の概要 |
2020-2023年度にかけて,常伝導シート抵抗の異なる4つのアモルファスMoxGe1-x薄膜(試料A-D)に対して熱電効果を測定した. 2020年度に測定した試料A(Tc0 = 2.58K)では,電気抵抗測定から磁場誘起の超伝導-異常金属-絶縁体(SMI)転移が観測された.0.1Kまでの熱電効果測定によって,異常金属(AM)状態の起源が量子渦糸液体であることがわかった.本成果はPhysical Review Letters誌に掲載された. 2021年度には,局在性を高めて渦糸ボース凝縮を実証するべく,常伝導シート抵抗値がより高い2つの試料B,Cを作成した.試料B(Tc0 = 2.36K)ではSMI転移が観測されたが,渦糸の熱電信号の観測はAM状態内部にとどまり,渦糸ボース凝縮の証拠となる絶縁体相内での渦糸信号は観測されなかった.また,試料Cはゼロ磁場ですでに絶縁体であり,渦糸信号も観測されなかった. 2022年度には,試料Bに対して広い温度-磁場範囲で熱電効果を行い,熱ゆらぎ領域から量子ゆらぎ領域にかけての包括的な理解が得られた.また,量子-熱クロスオーバー線の発見によって,AM状態の起源が量子臨界点の存在に起因することを実証した.本成果はNature Communications誌へと掲載された. 2023年度は,試料Bと試料Cの中間の常伝導シート抵抗を持つ試料D(Tc0 = 0.8K)を測定した.SMI転移が観測されたが,これまでと異なり,AM状態内で振幅ゆらぎに起因する量子グリフィス(QG)状態が観測された.従来,QG状態は高結晶性の2次元膜で観測され,試料内の欠陥によって誘起されると言われてきた.今回の試料Dは,常伝導シート抵抗をパラメータとした超伝導-絶縁体転移の臨界点近傍に位置するため,強い量子ゆらぎのせいでQG状態が生じた可能性がある.また,試料Dでも絶縁体相内の渦糸信号は観測されなかった.このため今後は,さらに局在性の強いアモルファス超伝導体(MoxSi1-xやInOx)を用いて渦糸ボース凝縮の実証を行う予定である.
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