研究課題/領域番号 |
20K14415
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分13030:磁性、超伝導および強相関系関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
川上 拓人 大阪大学, 大学院理学研究科, 助教 (00750895)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | グラフェンナノリボン / ドメインウォール / トポロジカル束縛状態 / 磁壁 / トポロジカル物質 / グラファイン / 単層黒リン / トポロジカル絶縁体 / トポロジカル超伝導 |
研究開始時の研究の概要 |
スピンや軌道などの大きな内部自由度の協奏によって現れる, 新奇な物理現象とそのトポロジカルな起源を探索する. また, その検出理論の研究を推進する. 特に, 大きな有効スピンを持つ逆ペロブスカイト物質や冷却原子気体, 多軌道モデルで記述されるツイスト2層グラフェン, 多成分の秩序変数をもつ超流動ヘリウム3などの多様な物質群を, 多自由度の観点から理論的に研究する.
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研究実績の概要 |
令和4年度は,前年度に引き続き,グラフェンナノリボンのトポロジカル磁気ドメインウォールに関する理論研究を推進した。前年度までの研究により,最も幅の細いリボンであるポリアセンにおいて,平均場理論を用いると,電荷中性の場合にはリボン対岸で反対向きのスピン偏極を持つ反強磁性秩序が現れ,電荷ドープすると反対向きのスピンを有する反強磁性状態が繋がったドメインウォールが形成されることが判明した。しかしポリアセンは,原子スケールの極めて細い物質であるため,量子揺らぎの効果が大きく,実際の物質において反強磁性のような長距離秩序が本当に生じるかは平均場理論の範疇では予想できないという問題点があった。一方,グラフェンナノリボンでは,リボンの幅が広くなるにつれ電荷中性の反強磁性型長距離秩序が回復することが知られていることから,一般の幅のリボンで電荷ドープを行った場合,どのような秩序構造が現れるかということに着目した。 本研究では,ハートリー-フォック型の平均場理論を用い,さまざまなリボン幅やドープ量におけるグラフェンナノリボンの磁気構造と,その熱力学的安定性を網羅的に調べた。そして,ポリアセンのように細いリボンでは,上向きスピンと下向きスピンがスピン偏極のないドメインウォールを経て切り替わる,コリニア型のドメイン構造を示すのに対し,比較的太いリボンでは,スピンが連続的に回転することによって切り替わる,ノンコリニア型のドメインウォールを生じることを明らかにした。いずれの場合でもドメインウォールはトポロジカル束縛状態を生じ,そこにドープされた電荷を格納することで安定化することがわかった。また,ドープ量を変化させるとエネルギースペクトルにホフスタッターの蝶に類似するフラクタル構造が現れることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
グラフェンナノリボンのドメインウォールについて, ノンコリニア性を取り入れて解析することにより, スピンが連続的に回転し, 強磁性のドメインウォールを経て切り替わる, ポリアセンとは異なるタイプのドメインウォール構造に着目することができた。現在これらの成果をまとめた論文を投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
ツイスト積層系における量子渦の解析およびトポロジカル超伝導の可能性について研究に着手する予定である。ツイスト積層グラフェンにおける超伝導が2018年に発見されて以来, ツイスト多層グラフェンやツイストhBN系などを含む, さまざまなツイスト系における超伝導が注目を集め, 新奇物性を示すことが期待されている。そしてこれらの超伝導は非従来型である可能性が高く, クーパー対の対称性について多様な理論提案がなされている。一方で, 磁場中における量子渦および束縛状態に関する研究は限られている。そこで本研究ではこれらの量子渦系の大規模数値解析を実施する。そして量子渦スペクトルの振る舞いの違いから, ペアリング対称性の検出を目指した理論の構築および,そのトポロジカル特性の理論提案を行う予定である。
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