研究課題/領域番号 |
20K14424
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分13040:生物物理、化学物理およびソフトマターの物理関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
舘野 道雄 東京大学, 先端科学技術研究センター, 特任助教 (20868468)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2021年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 細胞極性形成 / パターン形成 / 反応拡散系 / 相分離 / ブラウン動力学法 / Phase field 法 / 多細胞シミュレーション / 細胞極性 / 細胞の集団運動 / フェーズフィールド法 / レオロジー / 細胞選別 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、任意形状の細胞の集団運動を記述可能な新しいクラスの数理モデルを開発し、対応するプログラムを高度に並列化することで、細胞内の化学場から単一細胞の動態、さらには組織レベルの協調運動までを一挙に捕捉した、多階層・大規模シミュレーションを実現する。具体的な問題として、上皮細胞の固化・流動化(ジャミング転移)現象および、細胞性粘菌などに見られる細胞選別現象に本シミュレーションを適用する。これにより、組織の流動化や区画化といった細胞集団の基幹プロセスについて、物理学的な側面から新たな知見を与えることを目指す。
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研究実績の概要 |
昨年度までの研究により、細胞極性の連続体モデル(質量保存型の反応拡散系、MCRD)が保存系の相分離に類似したパターン形成や相図を示すこと、また、この系に界面張力的な量が存在し、これがパターンの粗大化のダイナミクスを制御することを示した。この相分離的な挙動の背後にある物理的なメカニズムをミクロな観点から理解することを最終的な目標に、今年度は対応する粒子モデルの開発を試みた。 MCRDの化学反応モデルとして、数理な解析が比較容易な化学種が数個のものが複数提案されているが、これらは系がパターンの粗大化を示すように発見的に構築されたモデルであるため、粒子レベルの反応経路は明らかではない。他方で、細胞極性を制御するタンパク質の化学反応ネットワークについては、化学種や反応係数も含め、実験的に詳細に調べられている。既存研究により、この実験結果を精密に取り入れた粒子シミュレーションがMCRDに見られるパターン形成を再現することが報告されている。しかしながら、これらのモデルの煩雑性のため(十以上の化学種の時間発展を同時に取り扱う必要がある)パターン形成の鍵となる物理因子を特定するには至っていない。 以上のことを受けて、我々はMCRDの特徴を取り込んだ出来るだけシンプルな反応系として、2次反応以下・3成分の粒子レベルの反応系を考案した。この反応系を、ブラウン動力学法と event-driven 法をハイブリットさせた反応拡散系の粒子モデルに適用し、単純な問題として化学種の拡散係数が一定である場合の挙動を調べた。その結果、マクロな化学場の緩和過程が、既存のMCRDの連続体モデルに見られる典型的な力学系を定性的に再現することが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度に研究を進めたのは主に以下の3点である:1. ブラウン動力学法と event-driven 法をハイブリットさせた反応拡散系の粒子モデル(Donev, et al., JCP, 2018)を実装した、2. 粒子レベルの反応系として化学種が少ないもの考案し(1)のブラウン粒子モデルに結合した 3.粒子モデルのマクロな挙動がMCRDの連続体モデルを再現することを確認した。従って、MCRD(連続体モデル)に対応する粒子モデルを開発・実装する、当初の目標はおおむね達成できたと考えている。 並行して、細胞集団の固化・流動化転移に関連の深い話題として、巨視的粒子がネットワーク状に凝集した状態(コロイドゲル)の1軸圧縮に伴う降伏現象の微視的メカニズムについて、実験的・理論的に調べた。その結果の一部として、ジャミング系にもみられる鎖状が本系にも見られ、この力学構造が降伏応力の殆どを担うことや、ジャミング系の降伏現象で中心的な役割を果たすT1イベントが本系には殆どをみられないことが分かった。実施者は上記に関連する論文を執筆し、内2編は現在読付き国際論文で査読中である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究では、MCRD(連続体モデル)の粒子モデルの開発・実装を集中的に進めた。単純な問題として、拡散係数が化学種によらない場合について、このモデルの振る舞いを調べ、マクロに予測される理論解が再現されることを確認した。次年度は、MCRDのパターン形成の必要条件である拡散非対称性に焦点をあてる。さまざまな粒子モデルのパラメータを検討し、MCRDの連続体モデルに見られる相図やパターン形成、粗大化ダイナミクスが回復されるのかについて検証を行う予定である。以上のことが再現された場合、さらに粒子の運動や化学反応の履歴を詳細に追跡することにより、化学反応・粒子の運動に伴う熱散逸等のマクロな量を計測し、これを基にMCRDに現れる界面張力的な量のメカニズムを研究したい。
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