研究課題/領域番号 |
20K14435
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分13040:生物物理、化学物理およびソフトマターの物理関連
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
足立 景亮 国立研究開発法人理化学研究所, 数理創造プログラム, 研究員 (40849626)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | アクティブマター / 非平衡相転移 / 相分離 / 非線形ダイナミクス / 臨界現象 / 細胞集団運動 / 非平衡 / 相転移 / 協同現象 / 普遍性 / 培養細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
平衡状態では、様々な物質で協同現象として相転移が生じる。一方、非平衡状態の協同現象については、理論的にも実験的にも明らかになっていないことが多い。特に、平衡相転移で現れるような普遍性が非平衡協同現象でも生じるのかどうかという問いは興味深く、非平衡物理の重要な課題である。 本研究では、培養細胞集団を実験系として用い、理論モデルの解析や数値シミュレーションとの比較を行うことで、非平衡現象における普遍性を調べる。特に、接着性細胞である上皮系や間葉系の細胞の集団を用いることで、細胞間相互作用と非平衡性が生み出す非平衡協同現象の解明を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究では、培養細胞集団のように自らエネルギーを消費して運動する要素の集団(アクティブマター)に注目し、各要素の運動性や要素同士の相互作用に起因した非平衡協同現象の普遍的性質の解明に取り組んでいる。これまで、アクティブ格子ガスやアクティブブラウン粒子といった、斥力相互作用するアクティブマターの基本的なモデルの性質をシミュレーションや理論解析で調べてきた。特に、細胞の接着基板などの効果で空間的異方性が生じると、密度の長距離相関(空間相関関数のべき型の減衰)が現れることを明らかにしてきた。この結果から、斥力以外の相互作用でも一般的に長距離相関が現れるのか、密度以外の量にも長距離相関が現れるのかといった、より基本的な問いに取り組むことを考えた。
アクティブマターでは運動の向きを揃える相互作用(配向相互作用)がしばしば生じることが知られているため、当該年度は配向相互作用や斥力相互作用を含む一般化された相互作用がはたらくモデルを考え、その性質をシミュレーションや摂動論で調べた。その結果、配向相互作用のみが存在する場合でも長距離相関が現れることがわかり、以前の結果は斥力相互作用がはたらく系には限定されないことがわかった。さらに、密度だけでなく、アクティブマター特有の性質であるポラリティ(要素の運動方向の配向度合い)にも長距離相関が現れることがわかった。
本研究では、アクティブマターと非平衡量子系の類似性に注目することで、アクティブマターの量子対応物を理論的に提案してきた。当該年度は、その方向性の研究をさらに発展させ、モデルの数値計算や解析計算に基づいて、量子系のアクティブマターに特有の相転移について調べた。その結果、古典系の典型的なアクティブマターとは対照的に、配向相互作用がなくても運動性が十分大きければ、要素が自発的に向きを揃えた秩序状態が生じうることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究開始時には、実験研究と理論研究を同時に進めていくことを計画していたが、現状では実験研究は進められていない。しかし、実験家とも議論しつつ、自身は広範なモデルシミュレーションや理論解析を行うことによって、非平衡協同現象の普遍性の解明に継続的に取り組んでいる。特に当該年度は、アクティブマターにおける要素間相互作用の種類に依存しない普遍的性質や、アクティブマターの特徴を量子系へと拡張した場合に現れる新しい性質を明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、非平衡協同現象のさらなる普遍的側面を明らかにすることを目指す。特に、アクティブマターの相分離や配向秩序を調べることを中心にして、他の非平衡現象との共通性や相違点を明らかにしていく。
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