研究課題/領域番号 |
20K14469
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
|
研究機関 | 名古屋大学 (2022) 神戸大学 (2020-2021) |
研究代表者 |
吉田 大介 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 特任助教 (90849861)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
|
キーワード | 一般相対論 / 特異点定理 / 宇宙論 / インフレーション / 初期特異点 / 弦理論 / 量子重力理論 |
研究開始時の研究の概要 |
現在の標準的な宇宙論では、宇宙はビックバン期以前にインフレーション期にあったとされています。このようなインフレーション宇宙は過去に遡っていくと初期特異点に到達する場合が知られています。本研究では、量子宇宙論と超弦理論の2種の量子重力理論に基づき、特異点を解消したインフレーション以前の宇宙像を明らかにすることを目的とします。量子宇宙論については、近年提唱された特異点の無い振動宇宙からインフレーション宇宙へのトンネル効果による遷移モデルの不安定性の問題の解決に臨みます。超弦理論については、インフレーション宇宙の初期特異点の、弦の巻き付き自由度による解消機構を定式化を行います。
|
研究実績の概要 |
本研究は、時空特異点の無いようなインフレーション以前の宇宙像の解明を目標としています。この目標に向け、本年度はペンローズによるブラックホール特異点定理の宇宙論的な時空への応用を行い、インフレーション以前の宇宙の普遍的な性質を明らかにしました。 ペンローズの特異点定理はを宇宙論的な時空に適用することで、物質がヌルエネルギー条件と呼ばれる条件式を満たすという仮定の下、「コンパクトでない空間を持った膨張宇宙は必ず初期特異点を持つ」ことが示されます。この事実から、膨張宇宙が初期特異点を持たないための一般的条件として、空間がコンパクトであること、すなわち、宇宙空間が有限であることが要請されます。私は、このような空間の大きさを特徴づける量を、光の軌道であるヌル測地線のアフィンパラメータに基づいて定式化しました。さらに、この方法で定式化した大きさには、「過去向き捕捉面」と呼ばれる2次元面における宇宙の膨張率で決まる、普遍的な上限が存在することを明らかにしました。一様等方宇宙では、ハッブルスケールよりも大きい2次元球面を考えると、それが過去向き捕捉面となります。現実の宇宙において観測により明らかになっている過去向き補足面を用いて、ヌル測地線に基づいて定式化された我々の宇宙の大きさの上限を評価しました。この結果は、当初の研究方針であったモデルの詳細に基づいた解析とは異なり、ヌルエネルギー条件が満たされている限り普遍的に成り立つ結果です。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
特異点の解消という観点からインフレーション以前の宇宙に迫ろうという研究として、当初は特定のモデルに基づいた解析を予定していました。本年度の研究は、モデルの詳細を用いずに、一般相対論の数理に基づく普遍的な研究手法をとりました。アプローチは異なるものの「特異点を解消する宇宙の大きさに制限がある」という普遍的な性質を導きくことができたため、研究はおおむね順調に進展していると判断できます。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度の研究では、ペンローズの特異点定理を応用し、特異点の無い宇宙の普遍的性質を明らかにしました。この方法は、初期宇宙モデルの詳細を用いずに、その普遍的性質を明らかにできるという利点があります。一方で、ペンローズの特異点定理は、光的エネルギー条件と呼ばれる条件が成り立つ場合にのみ有効であり、それを超えた状況では適用できません。このような状況にも適用可能な形で、初期宇宙の普遍的性質を明らかにしていくことが今後の課題です。
|