研究課題/領域番号 |
20K14475
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
吉田 数貴 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究職 (00825937)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | アルファノックアウト反応 / アルファクラスター / 原子核反応 / ノックアウト反応 |
研究開始時の研究の概要 |
原子核には、アルファクラスター構造という特異な構造が存在する。たとえば、20Neは10個の陽子と10個の中性子から成るが、これが陽子2個、中性子2個から成るアルファ粒子と、残りの酸素16に空間的に別れ、それぞれがある程度離れて束縛しているような構造である。本研究では原子核に陽子をぶつけてアルファ粒子が叩き出される反応を理論的に研究する。非常に単純化した説明では、このような反応の起きやすさは原子核がどの程度アルファクラスター構造を持っているかで決まる。本研究では理論計算と実験結果と比較からクラスター構造がどの原子核でどの程度成立しているかを網羅的に明らかにする。
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研究実績の概要 |
これまでの研究では、軽い原子核や中重核を対象にアルファノックアウト反応を用いてアルファクラスター状態の研究を行ってきた。本年度では、本研究の主要なテーマである重い原子核の核表面でのアルファ粒子形成について、アルファノックアウトの観点から研究を行った。典型的なアルファ崩壊粒子である210Po, 212Po では、そのアルファ崩壊寿命の測定値を説明するようにアルファ粒子形成率が間接的に決定されていた。本研究では、アルファ崩壊核からのアルファノックアウト反応を用いることで、そのアルファ粒子形成率をアルファノックアウト断面積として直接的に決定できることを示した。この結果は Physical Review C 106, 014621 (2022年6月) に掲載され、また、この成果は第17回(2023年)日本物理学会若手奨励賞 理論核物理領域(第24回核理論新人論文賞)を受賞した。本研究計画の成功を象徴する成果といえる。 また、関連する派生的な研究として、新奇なノックアウト反応として重陽子ノックアウト反応を用いて原子核内での重陽子的な陽子・中性子相関の研究成果を出版した (Physical Review C 106 064613)。アルファノックアウト反応を用いた新たな原子核偏極生成法の研究や、重陽子による包括的ノックアウト反応断面積の理論研究、核子およびアルファノックアウトにおける吸収効果とその系統性に関する研究も論文として纏め、現在査読中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の目標はアルファノックアウト反応によるアルファクラスター構造の網羅的研究であったが、その最も重要な対象である、アルファ崩壊するような重い原子核に対する研究が成果としてうまく纏まった。また、本研究の成果は日本物理学会若手奨励賞を受賞し、原子核研究コミュニティでも重要な成果として評価され、今後の実験研究や原子核構造理論研究を促進すると期待される。以上から、本研究は当初の計画以上に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
中重核やアルファ崩壊を起こすような重い原子核でのアルファ粒子形成を記述することは依然として原子核構造理論として難しい課題である。最近は平均場理論や反対称化分子動力学による原子核構造理論研究の専門家との議論を進めている。反応理論研究を専門としている私からは、どのような形成機構があればノックアウト反応断面積を説明できるか議論を進めている。実験としては、アルファノックアウト反応を含めた多彩なクラスターノックアウト反応実験研究の計画が理研RIBFを中心に進められており、私もこの計画に参画している。数年内に新たな実験データが網羅的に得られると期待される。
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