研究課題/領域番号 |
20K14479
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
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研究機関 | 大阪国際工科専門職大学 (2021-2022) 国立研究開発法人理化学研究所 (2020) |
研究代表者 |
富谷 昭夫 大阪国際工科専門職大学, 工科学部, 助教 (50837185)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 場の量子論 / シュウィンガー模型 / 量子コンピュータ / 変分アルゴリズム / QCD相図 / 素粒子物理学 / 原子核物理学 / 格子QCD |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は従来手法であるマルコフ連鎖モンテカルロ法では困難だった符号問題が存在する領域での場の量子論の相構造を量子計算を用いて明らかにする。有限密度領域では、場の量子論の作用が複素数になってしまうためマルコフ連鎖モンテカルロ法の適用外になる。量子計算では格子定式化に基づく場の量子論をマルコフ連鎖モンテカルロ法に頼らずに直接計算できるのでそれをもちいて相構造を解明する。並行して効率の良いアルゴリズムの開発も行う。
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研究実績の概要 |
本研究では、量子計算の手法を活用して、特にシュウィンガーモデルの相構造の理解を深めることができた。シュウィンガーモデルは相対論的量子電磁気学の一部であり、その理解は物理学全体の理解を深めるのに極めて重要である。 我々は、変分量子アルゴリズムを駆使して、従来のモンテカルロ法では解明することが困難であった有限密度領域の相構造を明らかにした。具体的には、量子計算シミュレータ上でシュウィンガーモデルの変分波動関数・変分状態を実現した。これにより、相互作用や有限温度効果を考慮したハミルトニアンの計算に必要な変分波動関数を用意し、その量子論的・統計力学的な期待値を計算することが可能となった。さらに、有限温度と密度を持つシュウィンガーモデルの相図を作成した。相図は物質の性質を示す重要なツールであり、その生成は本研究の重要な成果である。この成果は、古典と量子のハイブリッドアルゴリズムであるBeta-VQEアルゴリズムを活用することで達成された。 我々の研究は、従来の格子QCDの計算と同様に、連続極限や有限体積効果の評価を行った。その結果、有限温度T>0および化学ポテンシャルμ>0のシュウィンガーモデルの相図の定性的な描像を得ることができた。これは、量子計算を利用して物理学の未解決問題に対する新たな視点を提供する重要な一歩である。 以上の成果は、量子計算が物理の未解決問題に対する有力な手法であることを実証した。量子シミュレーションの分野において、これは基礎的な発展を促すものであり、今後の研究における新たな可能性を示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
目標としていた大型計算機用の量子計算シミュレータの開発において、当初の予想を上回る困難さが存在した。具体的には、大型計算機に適合したコード作成が想定よりも複雑であることが明らかとなった。これは大規模シミュレーションの実装に際し、さまざまな要素を並行して考慮しなければならなかったためである。 また低温領域における変分状態の精度が予想よりも悪く、これが状態準備の難易度を増大させる要因となった。シュウィンガー模型の相図の研究において、精確な計算を行うためには、状態準備の過程で生じるノイズを最小限に抑えることが重要である。しかし、実際の計算においては、状態準備の精度を保つことが難しい状況となった。 これらの課題により、研究の進行には一部遅延が生じている。しかし、これらの困難を克服するための対策を現在進行形で検討中であり、今後の研究進行に大きな影響を与えることはないと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の進行における課題への対応策として、以下の推進方策を考えている。まず大型計算機用の量子計算シミュレータの開発については、量子シミュレータ及び数値計算のより熟練した専門家に相談を行うことを検討している。専門家の意見や助言を得ることにより、より効率的で精度の高いコード作成が可能となり、シミュレータの開発をスムーズに進めることができると考えている。 次に低温領域での状態準備に関しては、変分波動関数のパラメータ数を増やすことを計画している。パラメータ数を増やすことで、より精密な状態準備が可能となり、低温領域での計算精度向上を期待できる。また、量子計算シミュレータの開発に用いているJulia言語の新バージョンが出ているため、それを活用することで計算速度の向上が見込める。これにより、計算時間を短縮し、研究全体の効率化を図ることが可能となる。さらに、シュウィンガーモデルの相図の解析については、大体積での計算を行うことでより明確な結果を得ることができると期待している。 以上の推進方策を実行することで、本研究の進捗を確実に進めることができると考えている。
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