研究課題/領域番号 |
20K14480
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
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研究機関 | 京都大学 (2023) 大阪大学 (2020-2022) |
研究代表者 |
土居 孝寛 京都大学, 理学研究科, 助教 (50804910)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 符号問題 / 複素ランジュバン法 / 原子核ハドロン物理学 / 物性物理学 / 冷却原子 |
研究開始時の研究の概要 |
量子モンテカルロ法は量子多体系の物理量を現実的な時間内で計算できる強力な理論的手法であるが、有限密度における量子色力学や高温超伝導体などの物理的に興味のある多くの系において計算精度を著しく低下させる符号問題が頻繁に生じる。本研究では符号問題が解決できる有力候補である複素ランジュバン法を発展させ、符号問題を解決することを目指す。冷却原子系の実験結果との比較・経路積分の被積分関数の変更・経路積分の経路の変更等により複素ランジュバン法が正しく機能するための必要十分条件を明らかにする。更に、複素ランジュバン法を改良し、有限密度における量子色力学や物性系等に応用する。
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研究実績の概要 |
原子核を構成する陽子・中性子や、その構成要素であるクォークは全てフェルミオンであり、フェルミオン多体系としての性質を調べることは重要である。特に、有限密度におけるクォーク・ハドロンの性質や超伝導相などの系の性質を第一原理的計算で調べることは、物理的に非常に興味深い。しかし、クォークの相互作用を記述する理論である量子色力学は有限密度では計算精度を著しく低下させる符号問題が生じ、第一原理計算を進めるのか困難である。本研究では符号問題を解決できる可能性のある手法として複素ランジュバン法に着目する。本研究は複素ランジュバン法が破綻する原因を詳細に調べて手法を改良し、符号問題が現れる系の第一原理計算に応用する事を目的とする。 2023年度の研究実績として、2次元2成分フェルミオン系の計算手法の開発を進めた。1次元の同様の系についてはこれまでの研究で調べたが、2次元系では計算コストが増大するため、計算手法の改良が必要となる。特にフェルミオン行列の逆行列の計算の計算コストを削減する手法を開発した。具体的には逆行列を求めたい行列を、逆行列計算が容易な行列と摂動に分けるように変形することで逆行列計算を簡単に実行できるように改良した。この手法を用いて2次元系の計算を現在行っているところである。2次元の2成分フェルミオン系では複素ランジュバン法が機能しない場合があることが先行研究で知られており、理論計算と実験結果を比較し、複素ランジュバン法の有効範囲を調べ、破綻する場合はその理由を探る。また、今後の研究で進めたい課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2次元における逆行列計算の計算コストを削減する手法の開発に時間がかかってしまった。
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今後の研究の推進方策 |
高次元の2成分フェルミオンインバランス系の物理量を複素ランジュバン法で計算する。具体的には、粒子数の密度依存性など、実験結果と比べやすい物理量を考える。その後実験と比較できるパラメータ領域において、実験結果と理論計算を比べる。実験結果は今回の場合、理論計算の厳密解と一致するはずのものである。複素ランジュバン法の性質上、実験結果と差異があるパラメータ領域が生じると予想されるが、その領域の範囲や、差異の大きさ、複素ランジュバン方程式のドリフト項の分布の変化などを定量的に調べる。特に、複素ランジュバン方程式のドリフト項の分布については、指数関数的に減衰すれば複素ランジュバン法が機能することがわかっているが、指数関数的に減衰しない場合に複素ランジュバン法が機能するかどうか、機能しない場合の厳密解とのずれについてはあまり調べられていない。1次元系など特殊な系では理論的な厳密解が知られているが、通常は厳密解がわからないので、厳密解として実験結果を活用するというのが本研究の特徴の1つである。今後の目的は、複素ランジュバン法が適用できない理由を探り、その原因を取り除くことで手法を改良し、理論的に予言できるパラメータ領域を広げることができるようにすることを目指す。 手法が改良した後、有限密度におけるクォーク・グルーオン系や2次元格子上の強結合フェルミオン系などに応用し、実験的な研究が難しい中性子星の内部構造や高温超伝導体の性質の予言など、複素ランジュバン法を応用して新しい物理現象を理解につなげる予定である。
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