研究課題/領域番号 |
20K14484
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分15020:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する実験
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研究機関 | 名古屋大学 (2021-2022) 東京大学 (2020) |
研究代表者 |
高橋 光成 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 特任助教 (60838960)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2020年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
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キーワード | 紫外線LED / 気球 / ゾンデ観測システム / ガンマ線 / チェレンコフ光 / 暗黒物質 / 超高エネルギー |
研究開始時の研究の概要 |
暗黒物質由来ガンマ線検出のため、解像型大気チェレンコフ望遠鏡 (IACT) が観測するガンマ線エネルギーの較正法を研究開発する。暗黒物質の質量として有望な1 TeV周辺の探索に適しているIACTの感度向上のため大気透過率を較正しエネルギー推定における系統的不定性を低減させる。既存の手法は高度約800 mで発生するミューオンを用いており約10 kmで発生するガンマ線イベントの大気吸収を較正出来ない。光源を気球により同程度まで上昇させ、その望遠鏡観測によりエネルギーを較正する。IACTによる観測全般に寄与するが、とりわけ暗黒物質からの輝線ガンマ線検出に大きな効果がある。
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研究実績の概要 |
気球に搭載して高度約10kmまで上昇させ、地上の望遠鏡から観測する光源の開発、試験を行った。前年度までに紫外線LEDを幅100ns程度の高速で駆動する回路の製作・試験を行ったが、これは重い固定電源から電力を供給するため気球に搭載できるものではなかった。当該年度は一般的な単3ニッケル水素電池3本でLED1個を駆動する回路を開発、試験した。電池から得られた電圧は昇圧され、9.8~11Vの範囲で設定できる。回路は㈱カイズワークスに設計・製作してもらい、名古屋大学で光量・パルス幅を測定した。測定では実際の光源の観測を想定して望遠鏡カメラに用いられる光電子増倍管で光パルスを検出した。その結果、電圧を最大にした場合、約40個のLEDを同期して発光させることで望遠鏡での検出に十分な光量が得られることがわかった。一方で当初想定していたLEDは20個程度であり、費用増加を避けるために1個あたりの電流量の改善を図る必要も生じた。パルス幅は想定していた100 ns程度となり、望遠鏡での観測時にカメラをトリガーし良好なシグナルノイズ比が得られると考えられる。 また回路の重量はおよそ100gとなり、LED40個分とした場合でも電池を含めた重量が2kg強に収まると見積もることができた。これによりゴム製の軽気球を用いて打ち上げられる見通しが付き、大まかな設計を定めることができた。 この他、所属する名古屋大学宇宙地球環境研究所の談話会での講演で計画に触れ、大気の専門家を含む出席者と意見交換を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当該年度に光源を開発しそれを搭載できる気球を設計する予定であったが光源の開発が完了しなかった。これは軽量な電池から紫外線LEDに大電流を流し要求される光量で発光させることが難しく、光源駆動回路の試作に時間を要したためである。また金額面でも開発・製作費用が予想を超えて膨らんでしまっており、部品点数を削減できないか検討を行っている状況にある。それに伴い、光源の温度依存性、角度依存性や耐久性の試験も進まなかった。今後試作品を用いて測定試験を進める。一方で気球の設計にはペイロードの重量を確定させることが必須であり、電池が重量の相当部分を占めると見積もられるため光源以外の部分を並行して進めることが困難だった。そのため気球の大きさ、ヘリウムの量、特定の高度で滞空させる仕組みの決定が進められていない状況である。設計と試作、試験を進めていく必要がある。また別に従事している共同研究、論文執筆が遅延し、これらの急を要するタスクに時間を割いた結果本研究に影響が出てしまった。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度において気球で打ち上げ可能な重量の光源製作の見通しがついたが、パルス発光・電圧昇圧などのために多くの部品・回路が必要となり開発・製作費用が増大してしまった。現在本助成金で得られている予算では実際の運用に十分な光量を持つ光源を製作することは難しい見込みである。そのため、技術実証に注力するという形でLEDの個数を減らした試作品を製作、同期発光や温度依存性などの測定を進めるのと並行し、新規の予算や機材等の調達を図る。特に光源以外の気球部分については本研究とは別の枠組みでガンマ線チェレンコフ光観測に役立つ計画を策定・予算を確保し、将来的にこれらを合流させて光源を搭載できるようにすることを検討する。光源観測以外にも気象データを取得してガンマ線データ解析で用いられる大気モデルと比較する研究は有用と考えている。また当該年度に開発した光源駆動回路については改良の余地があり、ニッケル水素電池のかわりにリチウムイオンポリマー電池の採用による重量・費用の削減などを検討する。
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