研究課題/領域番号 |
20K14487
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分15020:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する実験
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
樋口 嵩 大阪大学, 核物理研究センター, 特任助教(常勤) (90843772)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2020年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 素粒子物理学 / 基本的対称性 / 電気双極子モーメント / 超冷中性子 / 加速器 / 磁場安定化 |
研究開始時の研究の概要 |
TRIUMF研究所での中性子の電気双極子モーメント(EDM)探索実験のために不可欠な実験要素の開発を行う。 目標とする精度での中性子EDM測定には、実験装置内の極めて高い磁場の安定性を要するが、実験は強い背景磁場や磁場の変動が存在する加速器施設内で行われる。本研究ではこのような加速器施設内の環境磁場を適切なコイルの組み合せによって打ち消す補償システムを開発する。このシステムに、4層の磁気シールドと共存磁力計を組み合わせることで、目標とする磁場の安定度を達成できる見込みである。測定により得られた磁場の特徴に基づき、数値計算と有限要素法によるシミュレーションを用いて適切なコイルの設計と製作を行う。
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研究実績の概要 |
本研究では、TRIUMF研究所における中性子電気双極子モーメント(Electric Dipole Moment, EDM)探索実験のための環境磁場補償システムの開発を行う。目標とする精度での測定にはサイクル毎10fT程度の極めて高い磁場安定性を要する。4層の磁気シールドルーム(Magnetically Shielded Room, MSR)と原子共存磁力計を用いることでこの要請を達成できる見通しであるが、実験装置が設置されるTRIUMFの加速器施設内には、主にサイクロトロンの漏れ磁場による、最大約350 uTの強い背景静磁場が存在し、MSRに用いられる高磁化率材ミューメタルを飽和させてしまう恐れがある。そこで、本研究では、MSRの性能を保つため、磁気シールドを取り囲むコイルによって加速器施設内の環境磁場を打ち消す環境磁場補償システムを開発する。
これまでに、装置が置かれるTRIUMF研究所の実験エリアにおいて3次元磁場マップを取得し、それを組み込んだ有限要素法による磁場シミュレーションによって、およそ1000アンペア・ターンのコイル起磁力が必要であることを明らかにした。 2022年10月から、MSR の建設が始まった。本研究で開発する環境磁場補償システムの性能評価のためには、MSRの遮蔽性能にサイクロトロンの漏れ磁場が与える影響を評価することが第一歩となる。遮蔽係数測定の参照測定として、2022年10月に、MSR建設開始前に変動磁場発生用コイルによって発生される磁場の測定を行った。また、2022年10月から2023年1月には、MSRの消磁手法を確立するため、実際のMSRよりも小型の75cm立方の2層磁気シールドを使ってミューメタルの消磁試験を行った。それにより、厚さ2mmのミューメタルを消磁するには約3Hz未満の遅い変動磁場を使用する必要があることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該環境磁場補償システムは、磁気シールドルーム(MSR)の建設工程と合わせて設置する必要がある。世界的なサプライチェーンの乱れの影響を受け、MSRの建設スケジュールが当初よりも遅延した影響で、環境磁場補償システムのインストールも遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
2023年5月現在もMSRの建設は進行しており、2023年11月に完成予定である。2023年度は、建設の各段階においてMSRの遮蔽係数測定を行う。また、MSR完成後に環境磁場補償システムを設置し、サイクロトロンの漏れ磁場による環境磁場がMSRの遮蔽性能や消磁のパフォーマンスに与える影響を評価し、それらを環境磁場補償システムによって低減できるかどうかを評価する予定である。
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