研究課題/領域番号 |
20K14489
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分15020:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する実験
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
廣瀬 穣 大阪大学, 大学院理学研究科, 助教 (30816880)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | ヒッグス粒子 / 半導体検出器 / ATLAS実験 / シリコン検出器 / 高エネルギー物理学 |
研究開始時の研究の概要 |
ヒッグス粒子がトップクォーク、ボトムクォークおよびタウレプトンという第三世代のフェルミオンに質量を与えていることがこれまでに確認された。本研究では、第二世代のフェルミオンであるチャームクォークにも質量を与えているのかどうかを検証する。この検証は、陽子-陽子衝突を用いるLHC実験では出来ないと考えられていたが、実験技術の向上により検証できる可能性が高まっている。感度向上のために、研究期間を通してATLAS検出器を運転してデータを倍増させ、更にこれまでに用いられていないヒッグス粒子の生成モードを本研究では解析に導入する。これにより、世界最高の感度での検証を目指す。
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研究実績の概要 |
当該年度中にLHC加速器が再稼働し、第三期データ収集を開始した。研究代表者が運転を担当しているシリコンマイクロストリップ飛跡検出器(SCT)の性能を監視するためのソフトウェアの試運転をまず行い、問題なく動作することが確認でき、データ収集開始当初から順調に運転を行うことができた。その後、2022年末までの運転期間を通して、この監視ツールを用いて問題に即座に対応できる体制を維持し、運転に用いるパラメータにフィードバックを与えることで安定的にデータの取得を行うことが出来た。約三年の運転ブランクに全く影響されず、スムーズに質の良いデータを取得できたこと、また、そのような態勢を構築できたことは特筆に値する。 上記の検出器運転と並行して、ヒッグス粒子がcクォーク対に崩壊する事象の探索に向けた物理解析を続けた。多変数解析手法を利用したジェット事象の起源を同定してシミュレーションデータの統計誤差を改善する手法の研究が概ね終了した。これにより、既存の解析手法に含まれていたシミュレーションデータの統計誤差を由来とした系統誤差をおよそ半分に出来ることがわかった。この手法を今後の解析で導入することで、探索感度の向上が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度までに準備を行なったSCTの性能監視ツールを、実際のデータ取得に対して適応した。自身の指導する学生をCERNに派遣し、自身はリモート会議ツールなどを駆使することで検出器運転を行い、非常に効率的にデータ取得を行うことができた。前年度までの入念な準備が功を奏した結果である。 物理解析に関しては、初年度、次年度の貢献が認められ、ATLAS実験とCMS実験グループを代表して、国際会議IPA2022においてヒッグス粒子の性質測定に関する発表を行った。これには、本研究課題の目指す最終結果に先駆けて公表した、ヒッグス粒子とcクォークの結合に関する解析の中間結果も含んでおり、本研究課題の成果として大きなマイルストーンとなった。また、本課題で進めている多変数解析を用いたジェットの起源となる粒子の生成量の推定手法に関するポスター発表を国際ワークショップBOOST 2022にて指導学生が行ったことも大きな成果のひとつである。
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今後の研究の推進方策 |
今後はこれまでの研究成果をまとめて、物理解析の結果を学術論文と公表することで本研究課題を締めくくる。また、引き続きLHCの第三期運転の衝突データの取得を進め、当該研究の将来的な感度向上に必要なデータを集める。将来的な大統計データを用いた際に考えられる、より高度な解析手法の開発も並行して行う。
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