研究課題/領域番号 |
20K14523
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分16010:天文学関連
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研究機関 | 国立天文台 (2021-2022) 学習院大学 (2020) |
研究代表者 |
谷口 琴美 国立天文台, 科学研究部, 特任助教 (40865549)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 星間化学 / 星形成 / 電波天文観測 / 天文学 |
研究開始時の研究の概要 |
大質量星は銀河の進化や太陽系の形成過程を理解する上で重要だが、その形成過程の研究は中小質量星に比べて遅れている。大質量星周辺のガスの化学組成には天体毎に異なる特徴があると発見され、それは大質量星の形成過程を解明する手がかりとなり得ることがわかってきた。本研究では、この大質量星形成領域における化学的多様性の起源及び大質量星形成過程について、電波天文学的観測手法、室内実験、化学反応ネットワークシミュレーションの3つを統合的に駆使して解明することを目的とする。
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研究実績の概要 |
低質量原始星周囲では温度が25-35K程度の領域で炭素鎖分子が生成していることが知られており、温かい炭素鎖分子の化学(Warm Carbon-Chain Chemistry; WCCC)として知られている。一方で、大質量原始星周囲の炭素鎖分子の生成メカニズムおよび有機分子との関係は明らかになっていない。そこで、南米チリにあるALMA干渉計のBand 3のデータを用いて、5つの大質量原始星周囲における、炭素鎖分子の一種であるHC5Nおよび酸素を含んだ有機分子 (CH3OH, CH3OCH3)、窒素を含んだ有機分子(CH3CN, CH2CHCN, CH3CH2CN)の空間分布や化学組成について調べた。空間分布の比較から、大質量原始星周囲ではHC5Nは温度が100K以上のホットコアと呼ばれる有機分子が気相中に豊富に存在する領域に共存する形でいることがわかった。観測された化学組成を化学反応シミュレーションの結果と比較したところ、観測された全分子の存在量は、温度が160-200K程度の段階のシミュレーションの結果と一致した。これらの結果は、大質量原始星周囲の炭素鎖分子は、低質量原始星周囲のWCCCよりも高温領域に存在し、新しい炭素鎖分子の科学メカニズムでないと説明できないことを示す。 本研究で、Hot Carbon-Chain Chemistry (HCCC)を提案した。炭素鎖分子のうちシアノポリイン(HC2n+1N)などの比較的安定な分子種は、温度が25-100Kの領域で気相で生成し、固体ダストに吸着され、固体ダスト表面の氷マントルに蓄積していき、温度が100Kを超えた領域で氷マントルの蒸発と共に炭素鎖分子も蒸発するというメカニズムである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
上記の研究内容については論文としてまとめ、投稿した段階である。また、別の大質量星形成領域の化学に関する研究については論文が受理された段階である。こちらの論文では、有機分子の相関関係を調べる上で新しい手法を提案したものであり、今後の研究で活かしていく。さらに、星間空間における炭素鎖分子の化学について、観測、化学反応シミュレーション、量子化学計算、室内実験に関して、海外の共同研究者と共にレビュー論文を執筆し、投稿した。
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今後の研究の推進方策 |
ALMAのデータを用いた統計的手法により、大質量星周囲の化学的多様性についてより詳細に調べる。また、低質量星形成領域とは物理環境が大きく異なるため、直接的な比較が難しいこともわかってきた。そこで、中間の質量を持つ原始星周囲の炭素鎖分子の化学についても調査を進める必要があると考える。
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