研究課題/領域番号 |
20K14526
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分16010:天文学関連
|
研究機関 | 国立天文台 |
研究代表者 |
但木 謙一 国立天文台, TMTプロジェクト, 特任助教 (30726435)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
|
キーワード | 電波天文学 / 銀河天文学 / 銀河進化 |
研究開始時の研究の概要 |
楕円銀河の形成過程の解明は現代銀河天文学における究極的な目標の1つである。現在の我々の理解は、『およそ100億年前にあるコンパクトな大質量銀河がガスの枯渇した小質量銀河との衝突合体を経て、巨大な楕円銀河へと進化した』というところまでであり、さらに遡った歴史についてはほとんどわかっていない。本研究では、コンパクトな大質量銀河の直近の祖先だと考えられるサブミリ波銀河に着目し、世界最高性能のアルマ望遠鏡を用いて分子輝線の観測を行い、ガスの運動学的・物理的性質を明らかにする。
|
研究実績の概要 |
本研究課題の究極的な目的は、遠方宇宙にある楕円銀河の祖先となるような銀河を観測し、どのようにして楕円銀河へと進化するのかを解き明かすことである。今年度はアルマ望遠鏡を用いて、赤方偏移6(およそ130億年前の時代に相当)の明るいサブミリ波銀河G09.83808の観測データの解析・論文発表を行なった。G09.83808は手前の大質量銀河による重力レンズ効果を強く受けており、その放射が8-9倍増光して観測できる点が他の類似研究に比べて優位性がある。今回の観測では、アルマ望遠鏡のバンド5の受信機を用いて、新たに一酸化炭素の高励起(J=12-11)輝線放射を7.8σの有意性で検出することに成功した。先行研究で報告されていた相対的に低励起の一酸化炭素輝線放射(J=2-1,5-4,6-5)のデータと組み合わせて、局所熱平衡にない輻射輸送方程式を解くコードであるRADEXを用いて、この銀河に付随した分子ガスの物理的性質を調べたところ、320+170Kと非常に高温であることがわかった。また今回新たに検出した高励起の一酸化炭素輝線の放射領域は有効半径が500pc程度であることがわかった。このような銀河の中心領域に集中した高温ガスは星形成活動に伴う紫外線放射だけで温められたとは考えにくく、活動銀河核からのX線放射や衝撃波などの他の加熱源の存在を示唆する。
この研究成果についてはTsujita, Tadaki et al. 2023, PASJ, 74, 1429として論文を発表することができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
第二子の誕生による育休の取得に加えて、育休後も在宅勤務をせざるを得ない状況となり、計画立案時に想定していたよりも本課題に関連する研究を進める効率が落ちてしまった。
|
今後の研究の推進方策 |
赤方偏移6にある銀河G09.83808のアルマサイクル8期でのフォローアップ観測は2022年4月に完了したものの、2022年度は解析を進めることができなかったため、2023年度にこのデータの解析を行う予定である。このプロジェクトでは新たに静止系122ミクロンにある窒素の輝線放射([NII]122)、静止系145ミクロンにある酸素の輝線放射([OI]145)、静止系158ミクロンにある炭素の輝線放射([CIII]158)の観測を0.5-0.7秒角の分解能で行い、すでに観測した[NII]205と[OIII]88の観測データと組み合わせることで、このスターバースト銀河におけるガスの物理状態を明らかにすることを目的としている。具体的には[NII]122/[NII]205光度比から電離領域にあるガス密度、[OI]145/[CII]からPDR領域にあるガス密度、[OI]145/[OIII]88から中性ガスの占める割合などを空間的に、または分光学的に分解して調べることができると期待している。これほど複数の輝線が検出されたこれまでの例はz=4にある1つの銀河だけであり、z=6の銀河でこれら全ての輝線を検出することができれば、インパクトのある成果になると期待している。
|