研究課題
若手研究
太陽系始原天体の観測に基づく原始太陽系円盤の理解は、一般の原始惑星系円盤の理解、特に円盤赤道面付近の円盤進化モデルの試金石として重要である。しかしながら、原始太陽系円盤における物質輸送・循環に関する統一的な物理描像は得られておらず、その解明が喫緊の課題である。本研究では、原始太陽系円盤の氷微惑星の生き残りである彗星をプローブとし、円盤の氷雪線外側における物質の輸送・循環に敏感な各種分子の物理量と円盤の氷雪線内側における物質輸送のプローブであるシリケイト鉱物の結晶度を観測的に求めることで、統一的な理解が得られていない原始太陽系円盤内の大局的な物質輸送・循環とその原因を明らかにする。
原始太陽系円盤の物質輸送を理解するため、彗星をプローブとして研究を行った。彗星の形成温度は、揮発物質の主成分であるH2O・CO2・COの存在量比から、彗星核の形成距離は鉱物組成から、ダストの性質はコマの偏光度の空間分布からそれぞれ推定した。これらの手法を21P彗星に適用した結果、同彗星は他の彗星と同定の距離にもかかわらず暖かい場所で形成されたことを示した。この手法を他の彗星に適用することで原始太陽系円盤の物質輸送について統計的な議論を進める。また、形成温度の推定のために開発した物理モデルをC/2014 Q2彗星のコマの空間分布に適用し、NH3が二次的に生成されていることを明らかにした。
彗星は46億年前に原始太陽系円盤で作られた氷微惑星の残存物であり、太陽系の化石とも呼ばれる。彗星には高温度生成物と低温度生成物が含まれており、原始太陽系円盤中での大規模な物質輸送の存在が指摘されている。本研究において、同一彗星の揮発性分子の元素組成比や同位体比と鉱物の熱履歴等を組み合わせることで、従来より詳細に原始惑星系円盤での彗星核の形成環境を推定する手法を確立した。さらに、本研究課題で開発した彗星コマの物理モデルを用いることで、彗星コマ中の化学反応を再現できることを示した。これらの手法は他の彗星や他の分子についても適用可能で、統計的な議論を進めるための基礎情報を提供する。
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