研究課題/領域番号 |
20K14608
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分18010:材料力学および機械材料関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
朴 明験 京都大学, 工学研究科, 助教 (90803479)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 塑性変形 / 不均一変形 / デジタル画像相関法 / 応力可視化 / 画像相関法 / 変形 / 構造材料 / 応力 |
研究開始時の研究の概要 |
エネルギーの低減や地震等の事故時の安全性向上のため、構造用材料における更なる高強度化が求められている。先進構造材料には、高強度だけでなく、優れた加工性や衝撃エネルギー吸収も要求され、高強度と延性・加工性・靭性の両方を兼ね備える必要がある。一方で、軟質なフェライト相と硬質なマルテンサイト相が混在する Dual Phase (DP)鋼は高い強度とともに良好な成形性を示すため、実用材として幅広く使用されているが、その優れた力学特性の原因は明らかになっていない。本研究では画像相関法を応用した応力可視化手法でDP鋼中の各相のミクロ局所ひずみ・局所応力を定量化し、DP鋼が示す不均一変形の本質を解明する。
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研究実績の概要 |
軟質なフェライト相と硬質なマルテンサイト相からなる二相鋼 (Dual Phase (DP))鋼は高強度・高延性とともに高い加工硬化能を示す代表的な先進高強度鋼の一つとして注目を集めている。単相材料は結晶粒微細化によって更なる高強度が実現される一方、延性が大きく低下してしまう欠点を示すのに対して、DP鋼においては結晶粒微細化により強度のみならず延性も大幅に向上する興味深い結果が得られた。近年、画像相関法という先端ひずみ解析手法より、微細粒DP材は軟質相/ 硬質相間のひずみの差が小さく両相がより均一に変形することが明らかになっている。しかしながら、結晶粒微細化による変形不均一性の緩和機構について十分に理解されていない。 本研究は、この課題に関して局所ひずみ(変形)だけでなく、両相間の力学的相互作用を考慮した応力分布(各相の内部応力の分布)をミクロ組織レベルで調査し、DP鋼の優れた力学特性の本質を理解することを目的としている。画像相関法を応用したミクロ応力可視化手法を用いて10μm程度の平均フェライト粒径を有するDP材におけるマイクロボイド周辺のミクロ応力可視化に成功し、マイクロボイドの形成前後に応力・ひずみ分布が大きく変化することが明らかになった。今後変形中マルテンサイト変態が生じるTransformation induced plasticity (TRIP)鋼を用い、マルテンサイト変態前後の応力分布を調査することにより変形誘起マルテンサイト変態の素過程とその粒径依存性を明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
異なるフェライト粒径を有するDPにおけるミクロ局所変形挙動を画像相関法により明らかにしている。結晶粒微細化により硬質なマルテンサイトがより変形に寄与しておりその結果、フェライトへのひずみの局所化を抑制することが確認された。一方、優れた延性特性を示す微細粒DP材は、多数のマイクロボイドが形成されているが、成長・伝播が大きく抑制されることが明らかになった。それに対して粗大粒DP材はボイドの形成頻度は低いが、成長・伝播の障害になるフェライト/マルテンサイト界面が少ないため、形成されたマイクロボイドが大きくなることが明らかになった。マイクロボイドの形成場所は主にフェライト/マルテンサイト界面またはマルテンサイト内部であり、成長・伝播はフェライト/マルテンサイト界面に沿って成長する傾向が見受けられた。こうしたマイクロボイドの形成・伝播は変形(ひずみ)の分布・局所化と大きく関係していることが示唆された。近年、粗大粒DP材におけるミクロ局所応力可視化に成功し、マイクロボイド形成前後に応力・ひずみ分布が大きく異なることが明らかになった。マイクロボイド形成後はマイクロボイドによる応力集中が各相の内部応力の分配よる応力集中より大きく、マイクロボイドが破壊に対する支配的因子になることが分かった。 変形中にマルテンサイト変態を伴うTransformation induced plasticity (TRIP)鋼においても応力可視化を行い、マルテンサイト変態前にオーステナイト粒に応力の乱れが生じていること、またマルテンサイト変態後にオーステナイト粒に大きな応力分布の変化が起きることを実験で確認できた。この結果は、オーステナイトの応力分布の変化が後続のマルテンサイト変態の生成場所に大きく寄与すること、また後続マルテンサイト変態がその応力分布によって助長或いは抑制する場所が生じることを示唆している。
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今後の研究の推進方策 |
変形中マルテンサイト変態を起こすTransformation induced plasticity (TRIP)鋼の優れた力学特性をミクロ不均一変形の観点から調査し、複合組織材が有する優れた力学特性の根本原因を解明する。本応力可視化手法は、マルテンサイトの変態を変態前後の局所応力・局所ひずみの変化の観点から理解し、また、微細粒によるTRIP鋼のマルテンサイト抑制機構が解明できると期待している。 オーステナイト粒径の異なるTRIP鋼における塑性変形中マルテンサイト変態量を定量化し、引張試験中その場X-ray diffraction実験を行いオーステナイトと変態マルテンサイトそれぞれの相応力をまず測定する。本課題で提案している応力可視化を用い変態前後の応力状態を詳細に調べることによりマルテンサイト変態の素過程および粒径依存性を明らかにする。
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