研究課題/領域番号 |
20K14676
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分19020:熱工学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
畠中 龍太 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 研究開発部門, 主任研究開発員 (80725333)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 薄膜熱電対 / 液滴衝突 / 全反射法 / TIR / ライデンフロスト / 核沸騰 / 気泡成長 / 液滴 / 減圧環境 / 気泡核生成 |
研究開始時の研究の概要 |
蒸発潜熱を利用した噴霧冷却技術は将来の有人宇宙往還機のキー技術であるが、極めて複雑な物理過程を伴うため解析予測が困難である。本研究では、その基礎過程として減圧環境下において単一液滴が高温面に衝突する系に着目し、液滴運動や徐熱プロセスを予測可能な物理モデルの構築を目指す。具体的には、加熱面表面の温度変化を高速かつ高空間分解能で計測可能な温度センサを用いて、壁面上における熱流束分布とその時間変化を推定する。さらに、全反射法によって液滴-壁面間の接触状況を同時計測することで、熱流束の推定結果と液滴・気泡の動的な挙動を関連づける。
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研究実績の概要 |
本研究の最終目標は、減圧環境下において、雰囲気ガスの相対湿度の調整を行った上で加熱面に単一液滴を衝突させ、固体表面温度の高時間/空間分解能計測と全反射法(TIR)による固液接触部計測の2つを同時実施することで気泡成長と壁面熱流束を評価すること、およびそれを用いて液滴の加熱面衝突現象における減圧環境の影響を解明することである。 FY2022は同時計測システムにおける温度データ校正試験手法に関して外部有識者と議論を進め、その見直しを行った。現在の熱電対アレイの構成では、薄膜熱電対部分と(同材料で構成される)リード線部分のゼーベック係数の効果を分離できず、両者のゼーベック係数に差がある場合は温度絶対値を正しく評価できないことがわかった。そこで、薄膜熱電対アレイに校正試験専用の薄膜測温抵抗体を形成する前提で成膜パターンの変更を行い、TIR/温度計測の同時実施のコンフィギュレーション(真空デシケータ内)で校正試験を行うための手順検討や治具の設計を実施した。 また、これまでに得られた実験データの解釈(特に濡れ広がる液滴内部の成長気泡の底部におけるミクロ液膜の有無)に関し、文献調査・検討・外部有識者と議論を進めた。現時点では液膜は無い可能性が高く、その前提で観測されている気泡成長速度を再現できるような物理モデルの検討を進めている。 TIR計測と温度計測の同時実施自体には成功しており、液滴実験において既に興味深いデータは得られているが、論文執筆のためは校正手順の構築と計測の不確かさの定量的な把握が不可欠であるため、FY2023中にその問題を解決し、査読論文1本としてまとめることを目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
FY2022までに予定していた全反射法計測(TIR)の導入および高速温度計測との同時実施は既に可能な状況に到達しており、凹凸レベルや時間/空間分解能の目標値は達成している。熱電対の校正に当初想定より時間を要しているものの、概ね計画通りに進捗している。 一方、当初計画よりも遅れているのは、1)相対湿度の計測/制御技術、2)温度データを基にした熱流束分布評価アルゴリズム構築、の2点である。1)は他作業にリソースを偏重していたため着手が遅れていたが、研究期間内には完了できる見込みがある。2)は、外部有識者のアドバイスを受けて評価方法の道筋が見えてきており、目標達成に近づいている。 以上より、全体としてやや遅れていると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では非常に高度且つ新規性の高い実験技術に挑戦しており、また研究対象である液滴現象も極めて複雑であるため、各要素を切り出して段階的に成果発表を積み上げていきたい。 提案者が博士課程学生として在籍した東京農工大学(単位取得退学済/未修了)の田川教授、過去に1年間在籍したDarmstadt工科大学(ドイツ)のTropea教授・Roisman教授との連携を積極的に行って、液滴現象や伝熱モデル化に関して理論的な考察を進めていきたい。 FY2023は、実験データの完成度を上げることに拘りすぎず、研究成果のまとめに移行することを心掛けたい。
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