研究課題/領域番号 |
20K14683
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分20010:機械力学およびメカトロニクス関連
|
研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
武田 真和 青山学院大学, 理工学部, 助教 (40845640)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
|
キーワード | 流体関連振動 / 空気圧浮上 / 励振メカニズム / 制振機構 / 個別要素法 |
研究開始時の研究の概要 |
空気の圧力により積載物を浮上させて搬送を行う空気圧浮上搬送装置は,条件により積載物と装置に激しい自励振動が発生する.自励振動が発生すると騒音問題や積載物の品質低下を招くため,自励振動を制振する機構が必要となるが,制振機構を開発するためには自励振動発生の励振メカニズムを解明することが課題となる. そこで本研究では,空気圧浮上搬送装置を対象に解析モデルを構築し,複雑な流れ場の方程式を解くための数値解法と時間変数に対するラプラス変換を併用した動的安定性解析を行う.さらに検証実験を行うことで解析結果の妥当性を検証し,励振メカニズムを解明する.そして,得られた結果を基に自励振動を制振する機構を開発する.
|
研究実績の概要 |
空気圧浮上搬送装置に関して,実機を対象とした流体構造連成系の厳密な解析手法を構築するため,これまでに構築した解析モデルを拡張した.具体的には,供給する空気の圧力により搬送物に生じる弾性変形の影響を解析モデルに組み込む作業を行った.この解析モデルでは,定常方程式から定常項である浮上変位,搬送物下部のすき間内の圧力,空気流量を求めることで搬送物の弾性変形を考慮した浮上解を導き,さらに微小振動を仮定して系の動的安定性を計算するが,設定パラメータによっては搬送物の変形が大きいことに起因して計算コストの増加,解の収束性などの問題が生じる.このため,搬送物の弾性変形を考慮して浮上変位,圧力,流量を3重の繰り返し計算によって求める解析アルゴリズムを新たに構築し,さらにMuller法を用いて系の動的安定性を計算する手法を構築した.また,搬送物の弾性変形に加えて,搬送物が並進・回転する場合についても計算を実施し,実機で発生する様々な振動モードが連成した動的不安定状態の解析が可能となるモデルの構築を行った.このモデルの妥当性は実験検証により確認した.さらに本研究では,個別要素法Non-smooth DEMを導入することで搬送物の多点同時接触問題を考慮したモデルを構築している.このモデルは,ベルト上に搬送物を模擬した粒子を積載し,自励振動発生時にベルトと支持構造(トラフ)および粒子間で多点同時接触が生じる状態を再現することで系の動的安定性を調べるものであるが,粒子の摩擦係数や反発係数の取り扱い,また計算の安定性に課題がある.そこで本研究では個別要素法Non-smooth DEMを対象に動的安定性解析モデルを構築し,その計算手法を確立した.このモデルを流体構造連成解析に組み込むことによって,多点同時接触を考慮した空気圧浮上搬送装置の解析が可能となり,制振機構の開発において重要な知見が得られる.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
空気圧浮上搬送装置に発生する自励振動を効果的に制振するためには,自励振動の特性と発生条件を明確化し,さらに詳細な励振機構を明らかにする必要がある.特に空気圧浮上搬送装置に発生する自励振動は搬送物と支持構造の弾性変形,搬送物下部の空気の流れ,多点同時接触を伴う極めて複雑な動的不安定現象であり,その解析は困難なものであったが,本研究ではこれまでに搬送物と支持構造の弾性変形および搬送物下部の空気の流れが連成した動的安定性解析モデルを構築した.さらに得られた解析モデルを用いて自励振動が発生する励振機構を詳細に考察し,自励振動の発生条件およびそのメカニズムを解明した.さらに本研究では,搬送物の振動変位と,搬送物表面およびチャンバ内の圧力変動を同時計測可能な実験装置を製作し,流体力による仕事分布を計測する実験検証により,解析モデルの妥当性を確認した.そして現在は,本研究の最終段階である流体構造連成問題にNon-smooth性を考慮した個別要素法を導入することで,多点同時接触を考慮した動的安定性解析モデルの構築に着手し,さらに制振機構を開発する段階に入っている.制振機構については,多点同時接触を考慮した解析モデルを用いることで開発を実施するが,これまでに得られた知見により空気を供給するチャンバ内の空気の圧力変動の位相進みを遅らせることでエネルギを散逸させるアキュムレータを接続する手法,さらに装置の支持構造にダンパを効果的に配置し支持構造の減衰を増加させることで系全体の安定化を図る手法を併用することが適切であると考察している.現在はこの制振手法の妥当性を実証するために,実験装置の製作を行っている.上記の進捗について総合的に判断した結果,おおむね順調に研究が進んでいると考えられる.
|
今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き,主な推進方策は流体構造連成問題に個別要素法Non-smooth DEMを導入することで搬送物の多点同時接触問題を考慮したモデルを構築することである.前年度の研究では,個別要素法Non-smooth DEMをこれまでに構築した動的安定性解析モデルに組み込む準備として,粒子の摩擦係数や反発係数の取り扱い,さらに計算の発散を防ぐことを目的に粒子法解析モデルを構築し,その検証を実施した.その結果,これまで課題であった計算の不安定性や計算時間の増加などの課題は解消されたため,得られた知見を基に流体構造連成系モデルに個別要素法を組み込み,搬送物である集合体の多点同時接触問題を考慮した動的安定性解析を実施する.一方,実験検証においては前年度に空気浮上式ベルトコンベアを模擬した検証用装置を新たに製作し,さらにトラフ表面に複数の圧力測定孔を設けて,搬送物の振動変位と搬送物下部のすき間内の圧力変動を同時測定することで流体力による仕事の分布を調べることができる環境を構築した.この実験装置を用いて得られた結果と,前述の多点同時接触問題を考慮した解析により得られた結果を比較することで,構築した解析モデルの妥当性を確認し,本研究の最終段階である制振機構の開発に着手する.制振機構の解析的,実験的な検証にはこれまでに構築した解析モデルおよび実験装置が流用可能であることから,比較的短時間で制振効果の検証が可能である.この検証により得られた結果を整理することで実機に適用可能な制振機構を構築し,本研究を完遂する予定である.
|