研究課題/領域番号 |
20K14892
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分23020:建築環境および建築設備関連
|
研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所 |
研究代表者 |
水谷 悦子 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 保存科学研究センター, 研究員 (90849796)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
|
キーワード | 組積造 / 塩類風化 / 脱塩 / 輸送現象 / 多孔質材料 / 電気泳動 / 非破壊分析 / イオン輸送 / 表面電荷 / 濃度拡散 / 電気的脱塩 / 文化財保存 / 塩類輸送 |
研究開始時の研究の概要 |
歴史的組積造建造物の塩類風化の抑制と構造補強も含めた維持管理手法を構築するうえで、適切な脱塩により蓄積塩を減らし、潜在的な劣化リスクを低減することが望ましい。電気的脱塩は通電による電気泳動を利用してイオンを材料から除去する方法であるが、組積造建造物への適応に際しては煉瓦と石材における通電時の水分やイオンの移動性状や壁体構成などを考慮した、脱塩条件の最適化と工法の開発が必要になる。本研究は実験室実験および数値解析を行い、組積造建造物に対する電気的脱塩手法の適応の可能性を検証する。また脱塩条件の最適化に向けて煉瓦、石材における通電時のイオン輸送メカニズムを明らかにする。
|
研究実績の概要 |
本研究は、一般にRC構造物に用いられる脱塩手法である電気的脱塩手法の組積造建造物への適応可能性を検証するものである。セメント系材料と本研究で対象とする煉瓦では水分移動特性や材料表面の物理化学的特性が異なるため、適切な脱塩条件を知るためには、実建造物における塩と水の含有状態の把握とともに通電・無通電時におけるレンガ内での塩と水分の輸送性状を明らかにする必要がある。令和4年度の研究実績は以下の通りである。 1.組積造建造物における塩析出による劣化と環境モニタリング 令和3年度までに、煉瓦の含水率と塩分濃度の計測手法の検討を実施してきた。令和4年度は、これまでに準備した計測器を用いて港湾部の組積造建造物を対象に、塩析出による劣化と周辺環境のモニタリングを開始した。モニタリング項目は、壁体の温度、含水率、電気伝導率の経時変化、定点カメラによる壁体の濡れ、塩析出状態の観察、剥落片量の測定、屋内外の温度、相対湿度、写真測量による三次元計測、析出塩の同定である。 2.通電に伴うレンガ内の塩分布の評価 令和3年度までの検討により、電気的脱塩は濃度拡散による脱塩に比べ高い脱塩効率を有することが確認された。令和4年度は、通電時の煉瓦内のイオン輸送性状を詳細に分析するために材料内の塩分布の変化も含めた検討を行った。あらかじめNaCl溶液を含浸させた焼成煉瓦を対象に電気的脱塩を行い、煉瓦内に残存する塩分量をイオンクロマトグラフと蛍光X線による元素マッピングの2種類の分析手法を用いて検討した。脱塩後の煉瓦内のイオンの分布の傾向は2つの分析手法で同様の結果が得られたが、量については分析手法による違いが見られた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究計画の第1年次および第2年次において、緊急事態宣言の発令等に伴い出勤および出張ができない期間があったため、進捗に遅れが生じている。
|
今後の研究の推進方策 |
令和4年度に、実建造物における塩性出と壁体内温度、含塩水率、周辺環境のモニタリングの体制を構築した。令和5年度は年間の変動が把握できるようにモニタリングを継続し、測定・分析結果の整理作業を進める。通電時のイオン輸送の性状の把握を目的とした基礎実験については、令和4年度までに実験機構の構築が完了している。しかしながら、令和4年度に実施した検討において、煉瓦内のイオン分布の評価方法については、手法による結果のバラつきが大きいことが明らかになった。そのため各手法の妥当性の検証を実施したうえで、再実験が必要である。
|