研究課題/領域番号 |
20K14929
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分23040:建築史および意匠関連
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研究機関 | 名古屋大学 (2021-2022) 金沢大学 (2020) |
研究代表者 |
樋口 諒 名古屋大学, 高等研究院(文), 特任助教 (70827196)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | ビザンティン建築 / 教会堂 / 寸法体系 / 工匠 / 三次元モデル / 建設技術 |
研究開始時の研究の概要 |
ビザンティン史において、初期と中・後期との間には史的断絶があり、この時期建築活動の担い手は建築家から経験則による工匠たちへと移行した。本研究は建設活動の最も基礎的な要素としての寸法体系から史料の残されていないこの時期の社会的な変遷を明らかにするものであり、首都と地方部(カッパドキア・クレタ島・キプロス島)の寸法体系を比較・検討することで中期ビザンティン帝国の尺度を体系的に明らかにするものである。
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研究実績の概要 |
東地中海の沿岸部に存在したビザンティン帝国史には、イスラーム勢力との抗争や聖画像破壊運動によって、初期(7世紀まで)と中・後期(8世紀以降)の間に史的断絶が存在する。この時期に建築活動の担い手は建築家から経験則に基づく工匠たちへと移行した。本研究は史料の残されていない初期から中期ビザンティン時代の社会的な変遷を明らかにする一つの鍵として残された建築に着目するものであり、特に工匠たちの経験的な知見において最も基礎的な要素と位置づけられる寸法体系に着目する。中期以降の寸法体系の実態が精査されてこなかった地方部において、異なる首都との関係性を有していたカッパドキア・クレタ島・キプロス島の三地域の教会堂群を実測し、地方部と首都の寸法体系を比較・検討することによって中期ビザンティン帝国全土の尺度を体系的に明らかにする。その 成果はビザンティンの地方部における知識の伝達の実態とそれに首都が果たした役割を提示するものでもある。 三年目となる本年において、新型コロナウィルスのパンデミック以降、初めての現地調査が可能となった。それでもただちに予定通りに現地調査が可能となったわけではなく、現地の様子を伺いながらすこしずつ調査地を選定せざるを得なかった。しかし、そうした状況下で状況の安定していたギリシャを中心に、トルコとアルバニアの三カ国において現地調査し、44の教会堂の調査を行った。それらの教会堂のうちのいくつかについては写真測量を中心とした 3 次元計測を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度の期間のうちの多くが依然として新型コロナウィルスのパンデミック下にあった。そのために渡航に制限があったこともあったが、前年度までほどではなかったためある程度の現地調査を行うことができた。具体的にはギリシャ・トルコ・アルバニアの三カ国における44の教会堂の調査を行い、それらのうちのいくつかについては既に三次元モデルについても作成している。 こうしたことから、今年度の調査はある程度十分にできたと言えるが、しかしそれまで2年分の調査の遅れを全て取り戻せるほどではなく、また調査にて得られた情報の分析にも時間を取られてしまっていることから、やや遅れていると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の研究遂行に際しては、海外調査によって必要な情報を取得することが非常に重要である。残念ながら初年度および次年度は現地調査を行えなかったが、 23年度にはある程度の数の教会堂の現地調査ができた。しかし、依然として本研究課題を遂行するにあたって十分に現地調査を行えてはいない。 そのため来年度は、本年度に得られた現地調査結果をもとに分析をすすめると共に、さらに必要な現地調査を進めていく。
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