研究課題/領域番号 |
20K14930
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分23040:建築史および意匠関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小見山 陽介 京都大学, 工学研究科, 講師 (40815833)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | クリスタル・パレス / クリスタル・アーキテクチュア / 建築構法史 |
研究開始時の研究の概要 |
1851年万国博覧会会場として建設されたクリスタル・パレスは、図像学的に後の近代建築に影響を与えたと建築史上位置付けられる一方、同時代に建てられた一連の類似建築(軽く明るい大空間を技術的に達成したそれらの建築は「クリスタル・アーキテクチュア」と19世紀当時呼称されていた)は、クリスタル・パレスの亜種として軽視されてきた。本研究は19世紀英国における真の技術状況・建築的到達点を理解するために、これまで無視されてきた鉄骨造建築の木材使用部位や、亜種として軽視されてきた建築群についても図面情報・現地実測調査等に基づいた位置付けを行い、建築構法史の新たなグローバル・ヒストリーを描くものである。
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研究成果の概要 |
クリスタル・パレスの木材使用箇所は、温室建築をとおしてガラスに覆われた大空間の取扱いに熟達していたジョセフ・パクストンが多くのアイデアを提供したと思われる部位である。一方で、同時代の鉄骨造建築を見てみると、必ずしもこうした木材の使い方が多くみられるわけではない。例えば、同時期にシドニーで建設されたロイヤル・ミントやロンドンに建設されたベスナル・グリーン・ミュージアムは現存しているが、それらの建築ではクリスタル・パレスのような木材の使用は見られない。一連のクリスタル・アーキテクチュア群における技術の適用判断もまた、クリスタル・パレス同様、設計者の個人的経験にも左右されたことを示している。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
「クリスタル・パレスはパクストンが設計した」と言い切ることはヒロイックな虚像を生み出し、「クリスタル・パレスはパクストンが設計したのではない」と言い切ることは構法が自動的に建築を生んだかのような誤解を生む。二者択一ではなく、パクストンを含む「複数の設計者」が、「構法的・様式的な価値判断に基づく意思決定」をしていった結果、クリスタル・パレスがつくられた、というのが真の姿である。一連のクリスタル・アーキテクチュア群も同様に、人の意思だけによってつくられたのでもなく、物の技術だけによって生まれたのでもな。これまでの建築史記述からはこぼれ落ちていた、よりダイナミックな建築物同士のつながりが発見された。
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