研究課題/領域番号 |
20K14997
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分25020:安全工学関連
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
松永 浩貴 福岡大学, 工学部, 助教 (70759240)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
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キーワード | ロケット推進薬 / 高エネルギー物質 / 化学安定性 / イオン液体 / 熱分析 |
研究開始時の研究の概要 |
高エネルギー物質(HEMs)を基剤とした"高エネルギーイオン液体(EILs)"は,高密度・低蒸気圧という特有の物性により,超小型人工衛星に適した高性能かつ取扱いが容易な新規推進剤となることが期待される。本研究では,EILsの安全利用に向けた安定性評価の枠組みを構築することを目的とし,①EILsを劣化させる因子の洗い出しおよびその影響度の把握,②実環境での長期安定性を再現できる試験法の構築,③EILsの安定性向上手法の構築の順で検討を進める。
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研究実績の概要 |
高エネルギー物質を基剤とした"高エネルギーイオン液体(Energetic Ionic Liquids, EILs)"は,高密度・低蒸気圧という特有の物性により,高性能かつ取扱いが容易な超小型人工衛星向け新規推進剤となることが期待される。本研究では,高エネルギー酸化剤アンモニウムジニトラミド(ADN,融点92℃)と固体可燃剤との混合のみで調製可能なADN系EILsをターゲットとし,安全利用に向けた安定性評価の枠組みを構築することを目的としている。 2021年度までの研究において,加速試験を用いたADN系EILsの劣化の因子の抽出および影響度の評価を実施し,実環境に近い条件における劣化挙動の評価のための貯蔵試験を開始した。2022年度は貯蔵試験を継続して貯蔵時の劣化挙動(分解量,金属類の溶出,吸湿など)を観測し,加速試験結果との比較用データの収集を進めた。試験精度向上に向け,さらに長期間の貯蔵試験も実施している。 さらに,昨年度に引き続き加速試験における反応熱,生成ガスを詳細に分析し,ADN系EILsの反応性に関する知見を得た。これを応用することで,①ADN系EILsを取扱う際の危険性評価,②既存のADN系EILを上回る特性(低融点,高性能,高着火性)を有する新組成の開発,③凝縮相反応の促進剤(触媒)の探索を進めることができた。①では,ADN系EILsは通常の取扱い条件では危険性の顕在化が見られないことが示された。②では,昨年度見出したADNにホルモヒドラジドを混合して得られるEILsについて,組成の最適化を進めた。③では,熱分析を用いた定速昇温下の熱挙動の解析による促進剤候補の絞り込みと生成ガスの解析による反応促進メカニズムの推定を行うことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度の目標は,ADN系EILsの劣化挙動に関して,加速試験結果の詳細解析(反応機構解析),実環境に近い条件での貯蔵試験による劣化挙動の観測を行い,加速試験と実環境貯蔵における結果を比較することであった。長期間の貯蔵試験結果の解析を基にした劣化度評価試験の妥当性検討を行うには至らなかったが,一部の試験について劣化度の評価および加速試験と実環境貯蔵の比較を開始することができた。次年度も引き続き試験および解析を実施することで十分な検討が可能な状況であると考える。 一方で,これまでの加速試験での反応機構解析を基にした危険性評価,新規EILs開発指針の構築,反応促進剤の検討をするに至った。これらの成果について当該分野で国際的に定評のある論文誌や国際会議で発表することができ,計画以上の結果が得られたと考える。 2022年度に計画していた検討をほぼ予定通り進めることができ,最終年度で目標が達成できる見込みが得られた。さらに研究成果を論文誌や国際会議で成果を発表するに至った。したがって,本研究はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は加速試験を活用した反応機構の詳細解析を行うとともに,2022年度に開始した実環境に近い条件における長期貯蔵EILsの劣化挙動の解析を実施し,加速試験における劣化の速度の測定結果との比較を進める。これらを基に試験法の妥当性を評価し,必要に応じて試験法や評価パラメータの見直しを実施する。最終的には,実環境での変化を再現できる加速試験法および種々の因子の存在下の貯蔵時間と劣化度の関係式の確立を目指す。
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