研究課題/領域番号 |
20K15004
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分25030:防災工学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 (2021-2022) 神戸大学 (2020) |
研究代表者 |
楳本 大悟 国立研究開発法人理化学研究所, 計算科学研究センター, 研究員 (80812883)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 交通流 / 災害 / 社会シミュレーション / 計算社会科学 / ビッグデータ分析 / 交通シミュレーション / 防災・減災 |
研究開始時の研究の概要 |
災害に伴って深刻な渋滞が生じることがある。そのような切迫した状況においては、限られた最新情報から復旧や避難の優先順位を決められるような、リアルタイム分析手法が必要かつ有効と考えられる。申請者はこれまでの研究で、ネットワーク構造そのものが原因で道路使用率に大きな偏りが生じて渋滞が起こることを発見し、道路ネットワークそのものに潜むボトルネックが渋滞の原因であるとの示唆を得た。本研究ではこれを踏まえ、災害で変化した道路ネットワークからボトルネックの位置を特定し、限定された情報からリアルタイムに都市全体の交通を推定し、さらに災害時にも渋滞しづらい道路ネットワークを作るための知見を獲得する。
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研究実績の概要 |
昨年度は前年度に引き続き、シミュレーション環境の構築をさらに進めた。前年度に阪神高速上でシミュレーションを実行したところ、ネットワークに複雑性が乏しく経路選択に自由度がないため、シミュレーションにおいて一般的に行われるイテレーションが不要となり、現実に見られるような複雑性が再現されないことが判明した。このため、シミュレーション領域を近畿全域に拡張し、仮想化して富岳上で実行可能とした。しかし、現実に近い自動車を発生させてシミュレーションを実行すると計算量が膨大となることが判明したため、より計算量が軽量となる別のフレームワークを検討した。 結果、自動車交通ではなく神戸市中心部に領域を限定した歩行者交通であれば自動車交通で見られるようなネットワークの複雑性を担保しながら計算量が現実的な時間で実行可能となることがわかった。この歩行者シミュレータを実行すると、試行した中では交通状況の改善には信号の除去が最も効果的であること、経路を指定して分散することもボトルネックの解消に効果的であることがわかったほか、全エージェントの避難完了までの時間が各変更に伴う定数の積の形で記述できることがわかった。 上記の結果は、道路ネットワーク全体の流れの効率がこれら政策によってコンダクタンスのような定数によって記述できることを示唆する。AROBおよびネットワーク生態学研究会にて発表したところ、前者にてセレクションされたため、論文として投稿し出版準備中である。 加えて昨年度末にはCOVID-19感染状況が改善したため、学会参加などにより当初から目標としているエージェントシミュレーションからマクロスコピックなシミュレーションへの置き換えの実行のための調査を開始できた。その結果、FET・抵抗を用いて交通容量を表現可能なネットワークモデルを構築できることに気づいたため、その可能性に関する内容を投稿・発表準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
歩行者シミュレーションに着手したことにより、ODに大きな偏りがあるとボトルネック箇所も大きく変わることが判明した。適切なODが入手可能かつ、シミュレーション時間が現実的な範囲に収まる地域に対象を絞る方針が適切であることが明確となった。その点で、歩行者シミュレーションに関しては携帯電話データを根拠とする妥当なODが入手可能であり目的にも合致しているうえ、現実的な計算時間で完了可能なため理想的であるが、自動車交通をそのまま実行可能な状況を再現できることが望ましい。ただし、分析対象として歩行者を用いて災害回避・ネットワークの非効率性について論じることができる土台は整っており、これに付随する結果も得られ始めていることからおおむね順調であると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
歩行者ネットワークの構築には成功したが、前年度までに対象としていた自動車交通ネットワークとは地図の形式が異なるため、新たに処理・分析手法を確立する。また、自動車交通と同様にマルチケースシミュレーションを実行し始めており、特徴抽出を試行し、結果が出始めている。これをさらに続行する。また、適切な自動車交通ODが存在する限定された都市区域がないか探索し、検討する。
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