研究課題/領域番号 |
20K15065
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分26050:材料加工および組織制御関連
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研究機関 | 仙台高等専門学校 |
研究代表者 |
森 真奈美 仙台高等専門学校, 総合工学科, 准教授 (80731512)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 塑性加工 / ラインプロファイル解析 / 生体適合性 / 組織解析 / 機械的特性 / 耐食性 / 生体用Co-Cr-Mo / 塑性変形 |
研究開始時の研究の概要 |
人工股関節や脊椎固定ロッド等に用いられる生体用Co-Cr-Mo合金は長期間の使用に耐えうる高い信頼性が求められるため、塑性加工により高強度化されて実用に供される。本研究では、生体材料として重要であるが未解明な部分が多い当該合金の耐食性や生体適合性に及ぼす塑性加工の影響を定量的な組織解析を基に明らかにする。そのため、電子顕微鏡的手法と共にこれまで力学研究に用いられてきた中性子回折を用いた転位組織解析を駆使し、塑性加工による組織変化と腐食速度や不動態化挙動との関係、さらには腐食により溶出する金属イオンなどの影響を系統的に明らかにし、生体用金属材料の基礎と応用に関する材料科学的理解を発展させる。
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研究実績の概要 |
本研究では、人工股関節や脊椎固定ロッド等に用いられる生体用Co-Cr-Mo合金の耐食性と生体適合性に及ぼす塑性加工の影響を定量的な組織解析を基に明らかにし、長期間の使用に耐え得る高い信頼性を得るための指針を確立することを目的としている。 2022年度は、2020年度に作製した微量の窒素を添加してfcc構造のγ相を安定化させたCo-28Cr-6Mo (mass%)合金を異なる条件にて熱間溝ロール圧延及び冷間スウェージ加工を行い、EBSD及び中性子回折を用いた定量組織解析を行った。中性子回折測定はJ-PARCのiMATERIA (BL20)にて実施し、回折データから相分率と結晶方位分布をRietveld Texture解析、転位密度をConvolutional Multiple Whole Profile (CMWP)法によるラインプロファイル解析によりそれぞれ定量化した。さらに、作製した試料を基板として用いて骨芽細胞を用いた細胞培養試験により生体適合性の評価を行った。その結果、冷間加工により細胞特性が向上することが示唆され、集合組織及び加工誘起マルテンサイト変態の影響が示唆された。また、微量に添加したZrにより細胞の基板への密着性が向上することを確認した。一方、熱間溝ロール圧延では結晶粒微細化及び転位密度の増加が起こるが、細胞特性への影響は見られなかった。以上より、組織と当該合金のOsseointegrationの関係が明らかになり、材料開発に有用な知見を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
産前産後の休暇および育児休業により研究計画を1年延長することとしたが、塑性加工により異なる組織を有した試料の組織定量解析および生体適合試験も実施できたことから、当初の計画に沿って概ね順調に研究を実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き2020年度に作製した試料を対象に、電気化学インピーダンス測定およびX線光電子分光により試料表面に形成する不動態皮膜の緻密性や組成、化学状態を調査する。また、引張変形によりひずみ量を変化させた試料を作製し、デジタル画像相関法により決定した表面のひずみ分布と耐食性の関係についても調査を行う予定である。耐食性評価は生体擬似溶液中にて浸漬試験とアノード分極試験を行い、腐食速度と不動態化挙動を評価する予定である。 上記結果を踏まえ、組織、機械的特性、耐食性・生体適合性の関係を定量的かつ系統的に明らかにし、組織・特性制御指針の構築とプロセス最適化を目指す。
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