研究課題
若手研究
薬物性肝障害(drug-induced liver injury; DILI)は,医薬品の開発中止および市場撤退の主要な原因である.そのため,医薬品開発の初期段階でDILIを惹起する可能性のある化合物を判定するための評価法が求められている.DILI発症の原因薬物はその多くが薬物由来の代謝物が関与していることが示唆されているが,DILI発症に関与する薬物代謝反応の全貌あるいは薬物代謝物の構造とDILIとの関連性は未だ明らかとなっていない.本研究では,生体内の様々な代謝酵素によって生成する薬物代謝物を包括的かつ迅速に同定し,薬物代謝物が生体に及ぼす影響を高解像度で評価可能な方法論の開発を目指す.
薬物性肝障害(DILI)発症に関与する薬物代謝反応の全貌を捉えることを目的として,ヒト肝腫瘍由来細胞株HepG2細胞を用いた薬物アッセイシステムを開発した.開発した薬物アッセイシステムを用いて,DILI発症に至るまでの作用機序が知られている薬物,および作用機序が十分に明らかにされていない薬物,合計10種類をそれぞれHepG2細胞に処理し,メタボローム分析を実施した.作用機序ごとに変動の大きい代謝物を調べるために,代謝パスウェイ解析を実施したところ,作用機序ごとに代謝物変動の特徴を捉えることができ,薬物ごとに異なる有害性発現経路および作用機序を推定することに成功した.
本研究で開発した薬物アッセイシステムは,高解像度のフェノタイピング解析が実施可能なメタボローム解析を基盤技術として用いているため,鋭敏かつ正確でノンバイアスのDILI評価手法である.当該アッセイシステムは,従来の方法論では見出すことのできなかった薬物性肝障害発症に至るまでの作用機序,および有害性発現経路を推定できる可能性があり,ひいては医薬品開発の効率化に貢献できると考えられる.
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 1件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (26件) (うち国際学会 1件)
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